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風のごとく駆け抜けて

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「さて、ここまで順調に進んできたミス桂水。当初52名いた参加者もあっと言う間に7名。それでは次のステージです。ここまで皆さんの知力と体力を競っていただきました。次は運を競ってもらいます」

あくまでもさっきの○×問題は知力だと豪語する司会者。

「と言うわけで、今からみなさんにクジを引いてもらいます。7名中当たりはわずかに2名。そう、その2名が決勝進出者です」

司会者が説明し終えると、係の人が7つの封筒を持って来る。
外からでは中が分からないようになっていた。

私を含め7人がそれぞれ思い思いに封筒を取る。
私は一番左端の封筒を取った。

「それではみなさん。取りましたね。中にある紙に決勝進出と書かれていたら当たりです。当たった人は紙を高々と上げてください」

さっそく封筒を開けてみる。
7人中当たるのは2人。
確率的には30パーセントも無く、決して高い確率では無いのだが……。

「お、先ほど一番で戻って来た澤野さんが当たりを引いたようです。そして、もう1人は生徒会長だ」
言われて初めて、生徒会長がこのミス桂水に出ていたことに気付いた。

「それでは、知力・体力・時の運をすべて兼ね備え、決勝に残った2名に改めて自己紹介をしてもらいましょう」
司会者がマイクを私に近付ける。

「駅伝部所属、1年6組澤野聖香です」
「生徒会所属、生徒会長。3年3組、城亜紀子です」
私達の自己紹介に周りから拍手と歓喜の声が上がる。
「澤野さん、こっち向いて」と男子生徒の声まで聞こえて来るありさまだ。

「若いっていいわね」
私の横で生徒会長がクスッと笑いながらつぶやく。
なんだかとっても恥ずかしいのだが。

「さぁ、いよいよミス桂水も決勝戦。ここで勝てば、優勝です。優勝くらい自分の力で勝ち取って貰いましょう。と言うわけで、決勝戦の種目はこれです」
司会者が元気よく手を伸ばす。

すると、1人の男子生徒が机をステージ中央まで運び、別の女子生徒がそこへあるおもちゃを置く。

「みなさん。説明は不要でしょう。黒ひげ危機一髪です。ちなみに、今回は黒ひげくんを飛び出させた方を勝ちとします」
自分で勝ち取って貰うと言ってたわりには、今回も思いっきり運頼りなのではないだろうか。

「いいわ。あなたからどうぞ」
生徒会長の城さんが私に先行を譲ってくれる。

「おっと、生徒会長の余裕か。先攻は駅伝部の澤野さんのようです」
お言葉に甘えて私は先に剣を刺すことにした。
えいっと目の前にあった穴に剣を入れる。

それと同時に、ポンッと勢いよく黒ひげくんが飛び出した。
その音に反比例するかのように、会場が静寂に包まれる。

「え……っと。なんと、一発で勝負がついてしまいました。生徒会長、なにも出来ず。これはまさに文句無し! 今年のミス桂水は駅伝部所属、1年6組の澤野聖香さんです。みなさん! 拍手!」

会場中から盛大な拍手が沸き起こる。
なんと言うか、これで良いのだろうか。
ほとんど運のみで勝ち上がってしまった。

そもそも、一番最初の○×で終わってもいいやと思っていたくらいなのに。
まさに無欲の勝利といったところか。

「それでは澤野さんには、こちらを掛けて今日、明日のけいすい祭を過ごしていただきます」

司会者が差し出したものを見て私は青ざめる。
そこにあったのは、デパートのパーティーグッズコーナーにある、白に赤の縁取りのタスキだった。

しかも白い部分に手書きで「今年の女王様」と書かれている。
司会者は嬉しそうに私の肩に掛けて来るが、私のテンションは急降下だ。