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風のごとく駆け抜けて

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「それにしても、若宮、湯川、大和に続き藤木まで入賞か。みんなこの一年で随分と強くなったな」

「ですね。見ててください綾子先生。この勢いで駅伝も勝ってみせますから」
葵先輩の決意に私達も元気良く頷く。

紗耶の800m決勝が終わたのが13時。
旅館のチェックインまで時間もあるので、私はサブトラックで明日の最終調整を実施する。

刺激入れに600mを走ってみたが、自分の予想以上に脚は軽く安心した。
昨日迷子になったせいで少々距離を走りすぎて不安だったが、これなら心配なさそうだ。

練習を終え、今日は由香里さんの車で旅館へ向かう。
旅館に着くと荷物を置いて、すぐにみんなでお風呂へ。

それから食事をのため大広間へと向かう。
私の後ろから紘子と雨宮桂が仲良く喋りながらやって来る。

そう言えば、この2人はレース以外では仲が良かったことを思い出した。
まるで私とえいりんのようだ。

その2人の後ろから麻子が入って来る。

「聖香、永野先生見なかった?」
 私が、「見てないわ」と言うとそのまま奥へと行ってしまう。
 
んなやり取りをみて、雨宮桂が反応する。ま
るで尻尾を振って嬉しそうに近づいて来る犬のようだ。

「あなたが澤野聖香さん。初めて見ました」
嬉しそうに私を見る雨宮桂とは対照的に、紘子はなぜか気まずそうだ。

そんな紘子の後ろから今度は藍子がやって来る。

「相変わらずあなたは有名人ね。澤野聖香。中学生の時、県中学ランキング1位……いや最近では県高校駅伝1区区間賞の方が有名なのかしら」
「いえいえ藍先輩。わたし、広島出身なんで、そう言うの知りませんでしたよ。へぇ、澤野さん速いんですね。さすが紘が本気で、す……」

雨宮桂が喋っている途中で紘子が彼女の腕をひっぱり、大広間の奥へと連れて行ってしまった。

「いったいなんだったのかしら?」
「さぁ。むしろ私が聞きたいんだけど」
私も藍子も意味が分からず、首を傾げるしかなかった。

食事とミーティングを終え、布団でゴロゴロしていると携帯が鳴る。

えいりんだろうか。

そう思い、携帯を見て「あれ?」と思う。
差出人は紗耶だ。

しかも紗耶は私の斜め前で携帯をいじっている。

なんだろう? メールをよく見ると添付ファイルがあることに気付く。
何かの写真だ。

それを見た瞬間に私は声を上げてしまった。
みんなが一斉にこっちを見る。

2つ隣の布団にいた紘子が私の所までやって来て、携帯を覗き、同じように声を出す。

「紗耶さん? どう言うことですか! いつの間にか撮ってるし」

そう私の携帯に送られてきたのは、紘子の寝顔だった。
やはり紗耶は、私が起きる前に紘子の寝顔を撮っていたようだ。

「でもぉ、可愛いからぁいいじゃん」
「そう言ってごまかしてもダメですし」
わりと本気で紘子は怒っていた。

「まぁまぁ。聖香も朝、紘子の寝顔をみて可愛いって言ってたかな」
晴美がにやにやしながら意地悪そうに声を出すと、紘子は急に大人しくなった。
いや、大人しくなる意味が理解できないのだが。