ひねり
「よっし!今日はお休みだね!じゃー、こっち来て!」
強引に引き摺られながら、僕は、彼女の案内する場所へと連れて行かれた。
一体どこへ?
今時の女子高生ってどこに行くんだ?
も、もしや援助交際ってやつか?
それは、ひねりと言うよりも、犯罪じゃないのかー!
不安に思いながら連れて来られたのは公園。
緑の芝生が綺麗に整備され、大きな木々が伸びやかに生えている。
想像していた展開じゃ無かった事で、緊張していた肩をガックリと落とし力が抜け、大きなため息を付く。
犯罪行為な展開じゃなくて本当に良かった。
「あー!おじさん、怪しげな所に連れて来られるとか思ったんでしょーぉ。やだー何考えてんのよ」
「な、なにって、別にぼくはそんな…」
図星を突かれ、慌てて言い訳をしようとする僕のセリフを言い切る前に、彼女は僕の事など気にする風もなく、芝生の上に転がって伸びをした。
「うーん。気持ちいい。おじさんもしてみなよ!気持ちいいよ」
なんだかまた一人で慌てていたのが馬鹿らしく、小さく息を漏らせば、彼女は早く転がってみなよと芝をポンポンと叩きながら笑う。
突っ立っていても仕方ないなかと、彼女に勧められるまま、同じように芝の上に寝転んでみる。
芝の上は、確かに気持ちよかった。
目の前には青い空が広がっていて、のんびりとした気持ちになれる。
気持ちよさに、目を閉じている僕の隣で、彼女は話し始める。
「ここね、よく家族みんなで来るんだ。それで、芝生の上にゴローってするの。そうするとね、なんだかすごく元気になれるんだよ」
うーん!!と声を出しながら彼女は両手を空へと伸ばす。
「あのね、ウチの家族全員で芝生に転がるんだよ!でね、ウチのお姉ちゃんなんか、さらにゴロゴロ転がっちゃうんだから!ちょっと笑えると思わなない?」
想像してみた。
家族で芝生に寝転がり、さらに転がる彼女の姉。
転がるってどこまで転がって行くんだろうか?
それを考えると、思わず笑ってしまった。
「あーひどい!本当に笑ったー!」
「ごめん。だってさ、ゴロゴロ転がるとか言うから思わずね」
「お姉ちゃん傷つく!!」
いや、君が言わなきゃお姉さん傷つくとかないよ。笑われてるなんて知らないんだから。
それからしばらく芝生に転がりながら、彼女と色々と話をした。
彼女の学校の事。
僕の会社の事。
いままでこんなに沢山人と話した事があるんだろうかと思うほど。
話しをしたことで、なにかが少しすっきりした。
これが彼女の言うひねりなんだろうか?
それにしても、今日の僕はおかしいのかもしれない。
だいたい、突然現れた迷惑な女子高生に対して普通の大人なら怒ってそのまま会社に行っていたろうし、仲良く芝生で転がったりもしないだろう。
きっと心の中で、僕は、彼女の言うひねりを望んでいたに違いない。