ひねり
「さて、私、そろそろ学校に行こうかな」
「え?」
「やだおじさん。私、これでも高校生なんだよ!学校行くに決まってるじゃん。今から行けば、お昼ごはんみんなと食べられるしね」
僕に制服と学生鞄を見せ、女子高生アピールをする。
「それに、すこしひねり入ったでしょ?」
彼女は芝から立ち上がり、ニカッと笑って、僕を公園に一人残し走って行く。
「あ!ねえ君!名前は?」
まだ名前を聞いていなかったのを思い出し、走り去って行く彼女に大きな声で叫んだ
「えー?なに?それナンパ?そのナンパ、ひねりが足りないよ」
彼女は両手をクロスさせ、大きなバツを作って笑いながら去って行ってしまった。
結局名前は聞けないまま。
その後、
彼女は、僕と毎朝同じ電車に乗っていた。
一人で乗っている時は、僕に小さく手を振り、
友達と一緒の時は、ちょっと笑顔を向ける。
そんなやり取りだけ。
あの日から、上手くいえないけれど、僕の中で、何かが変わった気がするんだ。
ちいさな変化、ちいさなひねり…。
そうだ、今度休みに僕の彼女をあの公園に連れて行こう。
そして、あの子に教わったように二人で芝生に転がってみよう。
それはきっと素敵な事に違いない。
この時、たぶん僕の顔は微笑んでいたと思う。
秘密の宝を見つけた子供みたいに・・・。
「ねえ、どうしたの?公園に行こうだなんて珍しいね」
いつもと違う僕に、彼女はそう言って不思議そうな顔をする。
「そうかな?まあ、いいじゃない。最近ここの公園気に入ってるんだ。」
そう言って芝生に転がる僕を見て微笑む彼女が言った。
「以外!でも嬉しいなー。私もね、この公園よく来るんだよ!」
「え?そうなの?」
「うん。家族みんなでね、たまにここで寝転がるの」
……。
聞いたことがある台詞。
「もしかして、寝転んだ後、転がったりする?」
「えっ?えっ?なんで知ってるの?も、もしかして、見てた???」
彼女は、顔を真っ赤しして両手で顔を隠す。
「いあや…なんか、想像してみただけ」
そう言って笑いながら僕は、彼女の代わりにゴロゴロと芝生の上を転がった。
転がりながら、空を見上げると
どこまでも広く、青く澄んで綺麗な空が広がっていた。
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