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(続)湯西川にて 36~最終回

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 「あ、すみません。
 大盛りのソフトクリームを、ひとつお願いします。
 いえいえ、2つ分のお金を支払いますので、
 できるだけ特大サイズで作ってください。
 この子。実はソフトクリームが大好物なんです」

 俊彦の首へ、しっかりと両手を巻きつけたままの響が、
売店のカウンターの中で次第に出来あがっていく、大きなソフトクリームの
様子に視線をクギづけにしています。
やがて、手渡されたソフトクリームの大きさぶりに、今度は響の瞳が
大きな丸い点にかわります。


 「じゃあ、あそこの日陰で食べようか。」

 俊彦が、バス停と売店のちょうど中間に有る、こんもりと茂っている
樫の木の下へ、響を抱っこしたまま日傘をさして足を急ぎます。
その二人の様子を、さきほどから伴久の女将がバス停の物陰から
見守っています。
木蔭へ移動してくる二人の視線から隠れるように一歩足を引き、
あわてて身体を潜めます。


 (今まで一切、男の人になついた事の無かった響が、
 いつのまにか俊彦さんに抱っこをされている。
 子供なりに、どこかで何か、通じるものを感じているのだろうか・・・・
 不思議なこともあるものです。
 でもさ。良い雰囲気じゃないかあの二人。
 こうして遠くから見ていても、見るからに、あれは
 昔からの親子のように見えるもの。
 知らないのは、本人同士だけだもの、運命というやつは
 いつだって皮肉だわね。
 どうしょうかしら。
 せっかくの親子の水入らずの光景だもの。
 バスが来るまであとわずかな時間を、このままずっと
 『かくれんぼ』をしていようかしら。・・・・
 余計者の私としては)

 直接の日差しと暑さを避けて、ようやく木蔭へ入ったと言うのに、
肝心の響は、いつまで経っても、ソフトクリームに口を
つけようとはしません。
額に汗を浮かべたまま、まっすぐの視線で、じぃっとアイスクリームを
見つめています。
早くしないと溶けてしまいます。
それほどまでに厳しすぎる今日の暑さです・・・・
そんな様子にじれったくなってきた俊彦のほうが、響をせかし始めます。


 「いいんだよ、たくさん食べても。
 響ちゃんのために買ったソフトクリームだもの。
 遠慮しないで、たくさん食べていいんだよ。
 え・・・・分けてくれるの? 俺にも。
 そうだった。二人で分けて食べようと俺たちは、
 最初に約束をしたんだっけ。
 わかったよ。じゃ二人で食べよう。
 俺はこの辺の、下のほうを食べるから、
 響は遠慮しないで上の方から食べて来い。
 じゃ、行くぜ。ほら、1、2、3で食べ始めるぞ。
 準備はいいかい響・・・・そら、行くぞっ。あっはっは」