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休戦。

「…穂子、これ以上戦うと家がなくなってしまうから止めようか。」
「え、ええと襲ってきたのは彦だったような気が…」

…その原因を作ったのはどこの誰だと心の中で呟くが我慢我慢。

「お前今度こういう事したら、合鍵渡さず現金ゼロで外に放り出すからな、家無き子になりたくなければちゃんと俺の言うことを守りなさい。」
「彦のケチ…戦いの前なんだからちょっとパーッと」

チャッカマンを突きつけて引き金をカチカチさせて差し上げる。

「…分かった？」
「わわわ分かりました分かりましたよ…」

穂子のペースで金を使われると俺のかろうじてやりくりしている仕送り家計生活がそれこそパーッとなってしまう。
高校一年目で破産して出戻りなんてそんなことは今から考えたくもない。

「さて、もう９時前、そろそろ」
「寝る！」
「ちょっと待」
「寝る！！」
「…お前はなんのために俺の部屋に来たのか黒焦げになる前に思い出そうか。」
「地上にバカンス！」
「トラウマ克服じゃなかったのかよッ！？」
「い、いやほら本音と建前って奴だね、だから寝」
「させるか。」

布団に照準がオートロックされた暴走ミサイル穂子の襟首を掴み、就寝を阻害。
動きを封じている内に寝床の上に教科書や本をぶちまける、これで寝れまい。

「私の寝床がーッ！」
「これはお前の寝床じゃない！というか昨日まで夜が戦闘時間だとかしたり顔で言ってた奴はどこの誰だ！」
「はい私！」
「いい返事！？」

という訳で戦闘の事を思い出したらしい穂子に一枚の手紙を突きつけてやる。

「…これは？」
「今日学校から帰るとき下駄箱の中に入ってた。」
「も、もしかしてもしかするとラブ」
「違う。」
「ラヴ(発音)レターッ！！」
「だから違うって言ってるだろ。」

訳もなく何故だかテンションが高い妖精をさておき、手紙を開いて中身を見せる。

「なになに、『ずっと貴方の事が好』」
「捏造するな。」
「はいはい、『今日夜十時半までにここに来い。来ないとこちらから襲撃する』それと住所が書いてあるね。パソコンで打ってあるから筆跡は分からないけど、それが何か？」
「まぁ明らかな挑戦状だな。見るかぎり。」
「違うよこれ逢い引きのお知らせだよ！夜十時に家にご招待なんてロマンチ」
「無理ありすぎるだろその解釈は。理由は知らないがさっきからお前の思考回路ピンク色だな！そうなんだな！」
「超今深夜テンションです！今夜はオールでいっちゃうぜベイベーッ」
「今まだ九時だぞ…俺明日まだ学校あるからパスで。」
「HEYHEY！！なんでそんなにテンションが低いのー低血圧じゃ後々苦労するぜボーイッ！だからテンション上げ…ってぎゃあああああ！」

何か変な方向に思考回路とテンションがセットされている穂子をチャッカマントリガー連打で黙らせる。
明らかにこの妖精は友達との泊まり行事の際テンション高すぎて寝付けないタイプだ、または前夜騒ぎすぎて遠足休む系女子だ。
というより妖精は普通人間が寝静まってから働くもんじゃないのか、普通。
夜にこっそり靴とかを直してくれる童話とかの妖精達も深夜テンションで作業していたのだろうか。
…まったくもって想像がつかないがこれ如何に。

「さてと、じゃあ行きますか。」
「え、行きますかって彦、用意とかしなくて大丈夫？未知の相手ならミサイルくらい担いで行った方が…」
「そんな物持ってる高校生は普通いない上に町中で使うバカは何処にもいない。最後にもう一つ、この呼び出したバカには心当たりがある。」
「？お知り合いとか？」
「こんな事を無自覚かつ考えなしにやってくる奴はお前かもう一人位しか知らない。」
「それってもしかして…」
…穂子も絶対知ってるはずだ。
とはいえバトルロワイヤル開始直後の今はまだバディの顔も全然分からない。
数少ない妖精関連の知り合い等、数えるまでもない。
それにこの挑戦状(？)が入っていた場所も場所だ、俺の下駄箱に入れるなど学校の奴以外にあり得ない。
と、そこまで穂子も考えたらしく、苦笑いしながら聞いてきた。

「…本当にラブレターじゃないんだよね…分かってやってるのかな、特に場所とか。」
「気にするな、無自覚でやる奴だから。多分今頃相手が分かってる事も知らずにニヨニヨしてるだろうさ。」

まぁ、あくまで予想だが。



≡≡火付け役は誰だ！≡≡