火付け役は誰だ!(九番以降)
「…とはいえ、やっぱりいるよね。メンドクサイよ!」
こちらはエレベーターから出た後に廊下の端を見た穂子の言葉。
無論そこには瑞と覆水媛佳、待ち伏せしていたようだが穂子が一人であることに戸惑い、不意討ちは成功しなかったようだ。
「一人とは威勢のいい…流石にあのキラキラネームはここまで来る勇気は無かったみたいね!」
「彦なら大丈夫、こっちには作戦があるんだから!」
「…お子さまの立てた作戦は作戦とは言わない、お遊び。」
「うるさいそこの水の奴!陰気にぶつぶつ皮肉を言わないの!モテないよそんな暗いと!」
「そうだそうだ!バディに向かって胸が無いなんて言う非常識妖精はモテ要素なんて無いのよ!今の時代キャラが立ってるだけじゃモテないの!だから謝れ!一万字以上の謝罪文かつ15万円以上の罰金!」
「…媛佳議題が違う上に裏切らない事。」
色々いつの間にか仲間割れが起きているのだが何の事なのか穂子には分からない。
首を傾げているうちに矛先は回り回って穂子に八つ当たりが飛んできた。
「それに!何よその格好!バディに色仕掛けでもしたの!」
覆水が指差すのは穂子の上半身。
先ほどのスプリンクラーで濡れてしまって、元が薄い生地なのでその結果が明らかになっている。
「なっ…失礼な!濡れてるのは貴女達がスプリンクラーを使ったから!そっちこそ!色仕掛けも出来ないような体でそう軽々しく言わないでほしいよ!」
「…ほう、よくぞ言ったな、よろしいならばこれは決闘ではなく処刑だごるあああああああ覚悟決めろおおおおおおお」
「…ひ、媛佳落ち着いて…血の涙流しながらそのセリフは死亡フラグ…」
「う、うるさいうるさいうるさい!瑞も見なさいあの顔!余裕綽々で胸を張るあの態度!ほらクイクイって誘うあの顔ほら!こっち挑発されてるわよほら!」
「…それに乗っちゃダメだから…明らかに敗北フラグが立ってしまっているから今。」
「やーいやーい絶壁ー服に凹凸が見られないけどー?」
「…いやダメだ引き下がれない!引かぬ負けぬ倒れられぬ!女としてあの敵は絶対に……ッ!」
「…挑発に乗ったらダメ…というより媛佳本当に女だったんだ…」
「何?それは女に見られるようなメリハリが無いって意味?え?瑞の無駄な凹凸削ぐわよ?」
「…いや、違う絶対違う信じて媛佳深呼吸して私の目と胸に照準を向けたその消火器と手刀を下ろして。…手刀で妖精は切れない削げない削がないで。」
「割と気合いでなんとかなる気がしてきた。」
「…遂にバディまでもが物理法則を無視しはじめてきた…」
戦いに何の関係もない話で大いに盛り上がっているが、このような話には流石に男子は入れない。
むしろ針のむしろを丸めて一気のみするような荒行の方が辛くないかもしれない。
嘘ついたら針千本どころかもはや血中の鉄分濃度が心配になりそうなレベルで針を飲まされることになりそうな会話。
その外野である男子、火口星彦はというと
「(…聞くな聞くな俺が聞いてるのが分かったら生命が軽く消し飛ぶ会話してるというか穂子お前は早く仕事をこなしやがれーッ!俺が女性の上半身プライバシーゾーンについて詳細な情報を聞かないうちにだ今すぐに!)」
あまりの繰り広げられる会話の恐ろしさに体育座りをして耳をふさぎ、プルプルと小動物のように震えていた。
聞いたのがバレれば無論刺される所ですまない、原型が残らないかひき肉化するか、どちらにせよ人としての最低限の形は保てない。
するべき行動は無論知らぬが仏、鳴かずば星彦消されまいである。
≡≡火付け役は誰だ!≡≡
作品名:火付け役は誰だ!(九番以降) 作家名:瀬間野信平