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瀬間野信平
瀬間野信平
novelistID. 45975
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火付け役は誰だ!(九番以降)

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何故か背筋が寒くなった。

「…今何かゴキゴキ言わなかったか穂子?」
「え?聞こえてないよ彦?」

無邪気に首を傾げる妖精が嘘をついてるとは考えにくい、何やら上の階で物凄く恐ろしいものが暴れまわっていた気がしたのだが気のせいなのだろうか。

「そんな事より彦、やるのやらないの?」
「ん?あぁ、じゃあそろそろ行くか。良いか、手順通りにだぞ。囮は『二重』にだ。」
「分かってる分かってる!彦こそちゃんと受け止めてよ!下の係はほぼそれだけなんだから!」
「ちょっと手が滑るかもしれません姫様。」
「上から重力分威力上がった踵落としをご所望?」
「ご希望に添えるように精一杯頑張らせていただきます。」

執事風にお辞儀をし、笑って手を叩く穂子を見て立ち上がる。
今回の作戦では俺は先に一階に降りて、用意しなければいけない。
先に下りのエレベーターに俺が乗った。
俺が下ってから穂子は上がって一人上に行く。
だから悪くすればここで別れ、も万が一だがあり得る。
そんな俺の気持ちを汲み取ったのか穂子はドアが閉まる前に話しかけた。

「彦彦、1つだけ良いかな。」
「…何だ?」

なにやらしおらしい顔をしている。
食べ物の名前が出てきたら即座に閉まるボタンを押して耳を塞ごうと決意して一応話を聞く。

「あのさ」
「早く言え閉まるぞ。」



「勝ったらちゃんと恋人みたいにデート行こうね!」





なっ…


不覚にも今まで押していた開くのボタンを放してしまい俺が何も言わないままエレベーターの扉は閉まった。

「………あの野郎、」

デートも何も二人で外に出たのはさっき帰り際に服を買ったときだけだ、デートなんて言えるものじゃ到底ない。
しかも閉まるときに見えた穂子の顔は照れた笑い方ではなく屈託の無い笑い方だった。
…やっぱり穂子は妖精だ、何百年と生きているからこそあんな台詞がさらっと言える。

それと同時にあの言葉はどこまで本心か分からない。
古来妖精は移り気だ、妖精と人間は同じ生を生きることは出来ないのだから仕方ない。
だからさっきの一言も気紛れ、いつもと同じ気紛れ。

…そうわかってはいても。


「…仕方ない、勝つしかないな、妖精にそう言われちゃあ。」


口が、顔が喜んでしまうのはきっと仕方がない事なんだ、だって相手は妖精だから。

なまめかしい(?)美人の妖精に頼まれちゃ(?)人間はそうせざるを得ないだろう。

そう心で言い訳が出来る事に喜びながら俺は一階に降り立った。




その顔には笑みを浮かべていたままなことに気づかないで。






十一番、火付け役は誰だ上、幕引き