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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 5 砂漠と草原の王

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 ヴォ―チェの手心によって助かった女性に自分の身につけていたマントをまとわせて、エドが彼女の手を引いて部屋を出ると、部屋の外では不機嫌そうに腕を組んで目を閉じているアムルと、側に控えているヴォーチェ。心配そうな表情でエドを見ているアレクシス。それに、普段と変わらない表情のレオが待っていた。
「ごめん、アムル。」
 エドがそう言って謝ると、アムルは片眉を上げるようにしながらエドを見て口を開いた。
「ふん。もう良いわ。だが、その娘を帰すことだけはならんぞ。お主がちゃんと面倒をみるのだ。わかったな。」
「うん。本当にごめんね、アレクとレオも待たせちゃってゴメン。」
「僕は別にいいんだけど、大丈夫かいエド。まだ気分が悪いようなら僕が抱いて行ってあげるけど。」
「大丈夫だよ。それにこの子の面倒を見ないといけないから、気分が悪いなんて言っていられないしね。」
「ま、そりゃそうだよな。エドを抱っこできなくて残念だったな、アレク。」
「え。いや僕はそんなつもりで言ったわけじゃないんだぞ。」
「はいはい、そういう事にしておいてやんよ。・・・で、エド。」
「ん?」
「お前、その人どうする気なんだ?面倒を見るって言った以上はグランボルカに連れて帰らなきゃならないんだぞ。俺達は別に構わないけど、リシエールの偉いさん方は嫌がるんじゃないか?」
「ああ・・・まあ、なんとかなる・・・いや、なんとかする。」
「アホ。なんとかするって言ってなんとかなるなら誰も苦労しないっての。とりあえずこの事件が終わったらクロちゃんに先に帰ってもらって、ジゼルあたりに相談するんだな。あいつなら何かうまいこと考えるだろ。」
「でも、そんな・・・私が面倒を見るって言ったのに、クロエやジゼルに迷惑をかけるわけには行かないよ。」
「アホ。協力してくれる友人ってのは、お前の力の内だ。自分だけで人一人の面倒見られると思ったら大間違いだぜ。グランボルカに戻るまでの船旅だってあるんだ。俺でもソフィアでも手が空いてる時はちゃんと使えよ。」
「・・・そっか。そうだね。ありがとう。」
「エド、僕もいるからな。僕もちゃんと手伝うから。」
「いや。アレクはいいよ。悪いし。・・・そもそも、他の女の人に触れてほしくないし。」
「ええっ・・・そ、そう。あはは。そっか・・・。僕はいいか・・・。」
 エドの言葉の終わりの方を聞き取れなかったアレクシスはそう言って肩を落とすと、トボトボと先に行ったアムル達を追って歩き出した。しかし、アムル達の歩いて行った方向には、なぜか壁があり、アレクシスは派手に頭をぶつけた。
「いつつ・・・何でこんな所に壁が。」
「やべえな。閉じ込められたぞ。」
 周りを見渡したレオがそう言って得物であるナイフを抜いた。
 レオの言うとおり、来た道にも壁が出現し、4人は廊下に閉じ込められてしまっていた。
「まずいな。エドはその人の側を離れるな。敵が現れたら僕とレオが相手をする。」
 そう言ってアレクシスも剣を抜いて周囲の警戒に当たる。
 だが一向に敵が襲ってくるような気配は感じられない。
 5分ほど警戒を続けた所で、レオが口を開く。
「なあ、アレクの魔法で壁をふっ飛ばしたりできないのか?」
「無理だ。僕の魔法を使うには、ここは狭すぎる。もし壁を破壊できたとしても、僕ら自身もタダじゃすまない。」
「エドは?」
「私も無理。ここは空気の流れが悪すぎる。私の魔法はあくまで空気を動かすことが主体だから、流れが悪いところとか、空気の量が少ない所だとあんまり威力がでないんだ。」
 二人の答えを聞いたレオは「はぁ」と溜息をついて座り込んだ。
「じゃあ王様かソフィア達が気づいてくれるのを待つしかねえな。どうやら敵さんは俺達に何かしようってわけじゃなさそうだし。」
「え、なんでそんなこと判るの?」
「気配がねえ。いや、正しくは無くなったか。さっきまで何かがこっちを見てるような気配があったんだけど、それが無くなってる。」
「そういえば、さっきまで変な圧迫感があったような気がするけど。今はないね。」
「何にしても警戒だけはしておくようにしよう。ここは敵の本拠地だし、いつ襲われるかわからないからね。」
 アレクシスはそう言って、構えていた剣を下ろして少しだけ力を抜いた。




「ふむ。また分断か。まったく懲りない連中じゃのう。我とヴォーチェがどれだけ強いかということをまだわかっていないらしい。」
 そう言ってアムルが再び拳を胸の前で合わせて不敵に笑い、ヴォーチェもカタールを抜いて周りを警戒し始める。
 と、突然二人の身体を立っていられないほどの衝撃が襲った。いや、衝撃ではない。
「ほう、重力の魔法か。はっはっは・・・面白い。面白いなあ。」
 アムルはそう言って笑うが、笑っている間にも二人にかかる重力は増していき、二人はあっという間に立ち膝でいるのがやっとの状態まで追い込まれた。
「はっはっはぁっ!これだからこの世界は面白い。」
「いつまでも笑っているんじゃないわよ。」
 そう言って、どこからともなく一人の女が姿を現し、動けないでいるアムルの顔面に前蹴りを見舞った。
「まったく、不愉快な笑い声よね。野蛮で、下品で。汚らわしい笑い声。」
 そう言って女は何度も何度も踏みつけるようにしてアムルの顔を蹴りつける。「はっはっは。お主こそもう少し上品で色気のある下着をつけたほうが良いのではないかな。素地は良いのにそんな下着では男は寄ってこんぞ。」
「・・・あんたは、まだ自分の立場ってもんがわかってないみたいね。」
 女は蹴るのをやめるとスカートの中からブラックジャックを取り出し、それでアムルの鎖骨のあたりを強打した。
「ぐぅっ・・・はっはっは。どうした女。それだけか?我を殺さなくていいのか?一思いに殺しておいたほうが良いのではないか?」
 苦悶の表情と脂汗を浮かべながら、アムルが女を挑発する。
「そう焦らなくてもすぐに殺してあげるから待っていなさい。」
 女がそう言って指を鳴らすと、二人の男が現れ、アムルのガントレットとヴォーチェのカタールを取り上げた。
「さて、これであんた達は武器を失ったわけだけど・・・どうする?命乞いでもしてみる?」
「ふははは、我が命乞いなどするわけなかろう。それより聞かせろ女。・・・いや、ミセリアの姉、セシリアよ。なぜ狂言誘拐でミセリアを我にけしかけるようなことをした。あれはお前の妹なのだろう。血を分けた妹が殺されてしまうかもしれないとは思わなかったのか?我にはそこが理解できないのだ。」