小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

グランボルカ戦記 5 砂漠と草原の王

INDEX|17ページ/25ページ|

次のページ前のページ
 




西の小屋にいた敵兵を縛り上げ、タリスマンを破壊したあとで、レオはひとつ深呼吸をすると、ソフィアに向き直った。
「ソフィア、少し話したいことがある。」
「そう。・・・ちょうど、わたしもレオくんに話したいことがあったんだ。」
 二人はそう言い合うと、どちらからともなく、小屋から少し離れた所にあった倒木まで歩いて行き、腰を下ろした。
「それで何かな、話したいことって。」
「親父から聞いた話だ。親父は母さんに話してないことだって言ってた。それでも自分たちは誤解なく分かり合えるって言ってたんだけど・・・俺はお前との間に秘密とか、そういう事を作りたくないと思う。」
「それって、おじさんとおばさんほど、わたしたちが解り合えていないって事?」
 そう言って少しさみしそうに、ソフィアが笑った。
「違う。そういうことじゃないんだ。・・・その。この間、クロちゃんと俺の事に嫉妬して、お前が王様の閨に行っただろ。あの時さ。すごい嫌だったんだよ、すごい後悔したんだ。どうせ当てつけだろうって思う反面、もしお前に愛想をつかされたんだったらどうしようかって。・・・そう思ったんだ。時間があれば最後は解り合えるかもしれないけど、そんな時間がなかったらって。そう思ったらさ。話せることはちゃんと話をして、一緒に考えたいなって思ってさ。」
「・・・そっか。かわいいなあ、レオくんは。」
 そう言ってソフィアはレオを抱き寄せた。
「かわいいとかそういう事言うな。」
「嫌がらないでよ。わたしは弱くてかわいくて、でも色んな事に一生懸命なレオくんのことが好きなんだから。・・・わたしもね、リィナおばさんに、自分のお父さんの事、聞いたんだ。なんとなく予想はしていたんだけど、やっぱりショックで泣いちゃった。わたしがレオくんに話しておきたいのはその話。多分、大変なことにレオくんを巻き込むことになっちゃうけど、それでもレオくんならきっと一緒に立ち向かってくれると信じてるから、話しておきたいんだ。」
 二人は顔を見合わせて頷き合うと、お互いがランドールとリィナから聞いたことを話し始めた。


 話し込んでいて遅れてしまった分、レオの時間停止を併用しながら、ソフィアとレオの二人は森の中を駆ける。
「まあ、二人の話をあわせて、色々と見えてきたこともあるけど、いまいちわからない事も多いんだよな。」
「わからないことって?」
「そもそも、皇帝についてる悪魔ってのは、どこから来たんだ?今までだって皇妃に先立たれた皇帝なんていただろうに、なんで今、この時代に現れたんだ?」
「うーん・・・それだけアレクシスくん達のお父さんが、皇妃様を好きだったってことかなあ。」
 考えこむように首をひねりながらソフィアが答えるが、その緊張感のない物言いにレオがげんなりとした表情で口を開いた。
「アレクシスくんのお父さんって言い方だと、話全体が緩くなるな。まあ、それはさておき、俺は悪魔が突然現れた理由ってやつがわかれば、この件ってのは全部解決できるような気がするんだよな。」
「確かにね。もともとはいい王様だったんだから。」
「だろう?」
「・・・もしかしたらグランボルカの双子の呪いってやつだったりして。」
「お前なあ、まさか本気でそんなこと言っているんじゃないだろうな?だとしたら怒るぞ。アレクとジゼルのせいだなんて事、冗談でも言うな。」
「あの二人の事じゃなくてね、もしアレクシス君とジゼルちゃんの他に双子がいたらどうだろう。例えばアレクシス君達のお父さんか、お母さんが双子だったとか。もしかしたら、もっと前の誰かだったとかさ。」
「なるほどなあその線もありか。まあ、そのあたりもアンのおっさんとジゼルを交えて話し合ってみようぜ。」
「え?ジゼルちゃんに言うの?」
「言うだろそりゃ。自分の事なんだからジゼルには知る権利がある。」
「まあ、そう・・だね。」
「なんだ?あんまり乗り気じゃなさそうだな。ジゼルが知るのは反対か?」
「反対ってわけじゃないけど、ジゼルちゃんの性格からしたらリュリュちゃんに危害が及ぶ現状を黙って見ていられないと思うんだ。そうなると自分が皇女であることを公言すると思う、でジゼルちゃんが鍵だってわかったらこの世界が危なくなっちゃう。」
 ソフィアの言葉を聞いたレオが、突然立ち止まる。
「どうしたの?」
「なあ、ソフィア。俺が間違っているのかもしれないけどさ。でもな、今リュリュが直面している現実。あれはあの子には過酷過ぎないか?目の前で自分の命を狙う刺客が死ぬ。自分を守るために人が死ぬ。それを今あの子は一人で背負ってるんだぜ。もちろんジゼルにそれを背負わせるっていうことになるから、根本的な解決にはならないかもしれない。でもあんな小さな子に背負わせる位なら、身内にだけでもちゃんと事情を話してあの子を楽にしてあげることも大事なんじゃないかな。・・・なんて、俺には似合わない事を言ってるかもしれないけどさ。」
 そう言って照れたように頬をかいて視線をそらすレオを見てソフィアは嬉しそうにニッコリと微笑んだ。
「似合わないなんて事ないよ。レオくんの言うとおりだと思うな。みんなで一緒に戦ってるんだもん。背負うものも一緒じゃなきゃね。わたし達みんなで背負うために、アミサガンに戻ったらちゃんと話をしよう。」
「・・・悪いな、俺の意見を押し付けるような形になっちまって。」
「いいよ。わたしはレオくんの言うことだから従うんじゃないもん。レオくんの言うことが正しいと思うから従うんだから。」
 申し訳無さそうな表情のレオに、ソフィアがそう答えてもう一度微笑む。
 そして、二人はどちらからとも無く手を取り合うと、一度頷き合って再び走り出した。