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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 5 砂漠と草原の王

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「全員欠けることなく集まったな。感心感心。さすがは我の見込んだ強者達だ。」
 古城の前にいち早く到着していたアムルは、後から来たメンバーの無事を確認すると、ヴォーチェの用意した昼食のパンを頬張りながらそう言って笑った。
「つか、ヴォーチェさんいつも王様の昼飯を用意してるんだな。すげえな。」
『戦の前の腹ごしらえです。皆様の分もございますのでどうぞご遠慮なさらず。』
 レオのツッコミにヴォーチェがやはり手紙で返答をする。
「そういうことなら遠慮無く!」
 そう言って真っ先にパンに飛びついたのはエドだった。
「だからあんたはそういう所を直しなさいっていつも言ってるでしょう。」
 相当お腹が減っていたのか、パンを頬張り過ぎて飲み込めなくなっているエドに、ため息をつきながらクロエが水筒を渡す。
「クロエちゃんって、なんかエドのお姉ちゃんみたいだよね。」
「はぁっ!?やめてよ変な事言うの。」
 ソフィアの指摘にクロエが心底嫌そうな顔をして抗議の声を上げた。
「別にいいじゃねえか。クロちゃん前に『妹が欲しい。妹がいたら一緒にアリスに仕返しできるのに』って言ってただろ。」
 そう言ってレオも敷物の上に腰を下ろしてパンを食べ始めた。
「そうか、クロエは妹が欲しかったのか。力になってあげたいけど、僕では兄になってしまうしな・・・。他に手頃な年齢の女性と言うと・・・ああ、そうだキャシーなんかどうだろうか。」
 いいことを思いついたとばかりにキャシーの名を上げたアレクシスをエドが白い目で見た。
「アレクはさ、何かにつけてキャシーの事を話題に出すよね。何?キャシーの事が気になっているの?」
 口の中のパンを飲み込み終わったエドがそう言って、白い目でアレクシスを見る。
「いや、別にキャシーの事が気になっているわけではないんだよ。ただ、妹となるとやはり年下だろう?」
「ちなみにアレク。私とクロエの年齢、知ってるよね?」
「ええと・・・アリスや僕の3つ下だから、20歳。」
「キャシーは?」
「19。」
「なんで私達よりキャシーのほうがすんなり出てくるのさ!」
「違うんだ、聞いてくれないかエド。別に僕はキャシー自身がどうこうとは思っていないんだよ。でもアリスやリュリュやカーラからも名前を聞くことが多いからなんとなく覚えてしまっているというだけの話で、決してエドやクロエを軽んじているとかそういうわけではないんだよ。本当に。」
「本当にお主は残念なやつよのう・・・。」
 必死に弁解をするアレクシスの様子を見ながらアムルはワインの入った盃をあおって笑った。
 
 昼食が一段落した所で、おもむろにアムルが立ち上がって全員のほうに向き直って頭を下げた。
「今更だが、我が国のいざこざに巻き込んでしまったこと本当に申し訳なく思う。そしてこれは我のわがままなのだが、ここから先は我とアレクシス、レオンハルト、それにヴォーチェの4名で行こうと思う。」」
 もちろんいきなり一方的にそんなことを言われて黙っているエドではない。
「私達だってここまで一緒に来たんだから、最後まで一緒に戦いたいよ。なんでいきなりそんなこと言い出すのさ。ミセリアだって、お姉さんのこと自分で助けたいよね?」
「え・・・ええまあ。でも王様がああおっしゃるってことは何かお考えがあってのことでしょうし、私はアムル様のご命令に従います。」
 つらそうな表情で、うつむきながらミセリアはそう答えた。
「ふむ。聞き分けがいいのう、ミセリアは。ソフィアとクロエはどうじゃ。」
「お任せしてよろしいのですか?」
「・・・ああ。まあなんとなくアムルの考えていることはわかるから。クロエ達はゆっくり休んでいてよ。僕も出来れば君たちについてきてほしくはない。」
「そうですか。・・・かしこまりました。お帰りをお待ちしております。」
 アレクシスの返答にかしこまって傅くと、クロエはそう言って恭しく頭を下げた。
「ソフィア。」
「いってらっしゃい。」
 レオが問いかけるまでもなく、ソフィアはそう返事をしてにっこり笑って手を振った。
「ええっ?ソフィアまで従っちゃうの?レオが浮気しちゃうかもしれないよ。ミセリアのお姉さんと。」
「しないよ。レオくんはそういうことできないもん。」
 ソフィアに自信満々に言われてしまい、エドはそれ以上何か言うのを諦めた。
「ついて行きたがってるのわたしだけか・・・。しょうがないなあ。じゃあ今回は諦めるよ。」
 しぶしぶとエドが諦めた所で、アムルは大口を開けて笑った。
「はっはっは。うむ。それで良い。ではアレクシス、レオ、行くぞ。」
 そう言ってマントをひるがえすと、アムルは二人を連れて砦の中へと入っていった。
 アムル達を見送った後で、エドはソフィアに尋ねた。
「ねえ、ソフィア。なんでレオ達だけ行かせたの?本当は一緒にいきたかったんじゃないの?」
「ああ・・・たぶんね、あれは王様の優しさだと思うんだ。私達を連れて行かないのは、連れて行かないほうがいいから。」
「よく、わかんないなあ。」
 そう言って首をかしげるエドにソフィアは少し哀し気なほほ笑みを浮かべながら続けた。、
「本当は私達も向き合わなきゃいけないことなんだけどね。・・・アレクシスくんもレオくんもやさしいから。」
「向き合わなきゃいけない?」
「うん。私はね、ミセリアちゃんのお姉さんは、もう死んでいるか、それに近い状況なんじゃないかな。と思ってる。ただ死んでいるならまだいいけど、もしかしたらもっと酷いことをされているかもしれない。王様はそんなふうになったお姉さんに、ミセリアちゃんを会わせたくなかったんだと思うよ。」
「ちょっと、ソフィア!」
「いいんです。」
 エドが声を荒げるが、他でもないミセリアがそれを制した。
「いいんです・・・無事でいてほしいとは思っていましたけど、アムル様がああいう風におっしゃるってことは、多分ヴォーチェさんが何か見て来たんだと思います。・・・だから、私は姉のことはアムル様にお任せしようと思います。」
「そんな・・・そんなのって、もしかしたらさ、もしかしたら救えるかもしれないじゃない。もしかしたら・・・。」
 必死にそう主張するエドの頭をクロエが乱暴に撫でた。
「エド、あなたが優しい子なのはあたしもアレクシス様もよく知ってる。でもね、世界はやさしくないの。貴女がさっき言ったとおり、わたしたちは戦争をしている。戦争をするってことは、敵味方問わず誰かが犠牲になるってことなのよ。」
 クロエに諭されてエドは黙って俯いていたがやがてポツリと声を漏らした。
「それでも・・・嫌だ。私はそんなの絶対に嫌だ。私の手の届くかもしれないところで死んでいく人を黙って見てるなんて事、したくない。私にもできることがあるかもしれない。私は4人の後を追う。」
 そう言って顔を上げると、エドはアムルたちの後を追って砦の中へと走りこんでいった。
「あーあ、まったくもう。」
「追わないでいいんですか?」
「いいわよ、中にはアレクシス様達もいるんだし、外は私達が見張ってる。滅多なことにはならないわ。」
 ミセリアの言葉にクロエが砦の方を見ながらため息混じりに答えた。