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七ケ島 鏡一
七ケ島 鏡一
novelistID. 44756
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グランボルカ戦記 5 砂漠と草原の王

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「そういう事じゃなくてね。クロエなら頼りになるからわたしがこれだけクタクタでもちゃんと皆のところに帰れるって信頼してるんだよ。」
 そう言って人懐っこい笑顔を浮かべるエドを見て、クロエはなんとなく気恥ずかしい気持ちになった。
「ま、まあ。そこまで買ってもらえているなら、魔力が回復次第皆のところに連れて帰ってあげるわよ。」
「・・・・・・えと。クロエ。」
「何よ。」
「・・・魔力の回復ってなに?」
「自分ひとりならともかく、人を連れての空間転移っていうのはあんたほどでは無くても、結構魔力を消耗するのよ。まあ、今の状態でも一人なら転移できるけどね。二人で転移するにはそうね・・・大体あと10分から15分くらいはできないかしら。」
 クロエの言葉を聞いて、笑顔のままのエドの顔色がみるみる青ざめていく。
「く、クロエ。あのね、確かにタリスマンは壊したんだけど、多分見張りの人はほとんど無傷だと思うんだ。雹が降ってきた時に、外に見にでてきてたからダウンバーストは直撃してないだろうし。」
「・・・あんた、それってまさか。」
 嫌な予感が頭をよぎり、クロエとエドが元々タリスマンが収められていた建物の方に視線を向けると、十数人の男たちが空の様子を伺いながら物陰から現れた。
「どうしようクロエ、あの人達に捕まったら、とてもアレクに言えないようなことされちゃうんじゃ・・・。」
「チッ・・・んなこと言ってる間に逃げるわよ。ほら、肩貸すから立って。」
「うん・・・クロエって、やさしいね。」
「は?何が?」
「だってクロエ一人なら今すぐにだって転移できるんでしょ。なのにちゃんと私のこと連れて行ってくれるんだもん。」
「・・・バカなこと言ってないで早く行くわよ。あんたは男みたいだから何もされないかもしれないけど、あたしは違うんだから。」
「あ、それって酷くない?クロエだって胸ほとんどないじゃない。」
「胸の話はしてないでしょ!それにあたしはあんたよりはあるわよ!」
「く・・・反論できない・・・でも、胸じゃないなら私の何が女らしくないっていうのさ!」
「そういう変にデリカシーのないところでしょ。大体、あたしのほうが5センチも・・・。」
「クロエのほうが5センチも、何だい?」
「とぼけないでよ。この間測った時にあたしのほうが5センチも胸が大きかったのに勝手にあんたやリュリュ様と同じ絶壁組に組み込まない・・・」
 振り返ったクロエの目の前には、いつの間にやってきていたのか、アレクシスが困惑した表情で立っていた。
「・・・すまない。まさかそういう話をしているとは思わず。」
「あ・・・ああああ、アレクシス様!た、大変失礼をしました。申し訳ございません!」
 そう言って深々と頭を下げるクロエを見て、逆にアレクシスが恐縮したような困ったような笑顔を浮かべた。
「い、いや。僕の方こそ少し唐突だったし、デリカシーが足りなかった。とりあえず確認したいんだが、こちらに向かってくる彼らは敵ということで間違いないのかな?」
「うん。私の魔法でタリスマンは壊せたんだけど、その後の事を考えていなくて。」
 アレクシスの問にはエドが答えた。
「そうか、であれば僕が来て正解だったというわけだね。彼らの事は僕にまかせて二人は安全なところに隠れていてくれ。」
「わたしも一緒に戦います。」
 そう言ってクロエが得物を構えるが、アレクシスは笑顔で首を振った。
「すまないがクロエはエドを頼む。あのくらいの人数なら僕ひとりで大丈夫だからね。それよりも万が一僕が相手を止めきれずに、そっちに行ってしまった時はクロエ、君がエドを守ってくれ。君だけが頼りだ。頼んだよ。」
「は、はい!」
「ありがとう。さあ、敵が来てしまうから早く隠れるんだ。それと、できればあまりこちらは見ないで欲しい。」
 そう言ってアレクシスはクロエとエドに背中を見せて敵と対峙しクロエとエドはアレクシスの指示通りに森の中へと身を隠す。
 二人が大木の幹の裏に寄りかかるようにして身を隠すと同時に高い樹々の枝葉で鬱蒼としていた森の中を赤い光が強く照らした。と、次の瞬間、二人の背後からアレクシスの声が聞こえた。
「二人共、もう終わったから大丈夫だよ。出ておいで。」
 アレクシスに呼ばれてクロエとエドが森の入口までやってくると、アレクシスの前にあった草むらや木々は消え去っており、もちろん男たちも消えていた。
 どうなったのかとエドとクロエが辺りを見回してみても、ある一点を境に円状に土がむき出しになっており、地面にはいくつかの黒いシミのようなものができているだけだ。
「さて、じゃあ皆のところに戻ろうか。実は南の小屋を破壊した後、迷ってしまってね。二人と合流できて本当に助かったよ。」
 アレクシスはそう言って朗らかに笑うが、しばらく現場を観察して、おおよそ何が起こったのか理解したエドは険しい顔で口を開いた。
「ねえ、アレク。」
「うん。なんだい?」
「ここまで、しなきゃいけなかったの?」
「・・・僕にはこれしかできないんだ。」
「・・・そう。」
「嫌いになったかい?」
 自嘲気味な笑いを浮かべて、アレクシスがエドから視線を逸らした。
「ううん。それがアレクの魔法なら仕方ないと思う。それに・・・私達は殺し合いをしてるんだから。敵も味方も、そういう覚悟で戦ってるんだから。・・・行こう、アレク、クロエ。みんなが待ってる。」
 自分に言い聞かせるようにそう言って、エドはアレクシスのほうを振り向かずに口をぎゅっと結んで歩き出した。