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机ノ上ノ空ノ日記 1

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目を擦ると、それは先の赤く熟れた果実であり、鮮やかな傘をつけたキノコだった。

天を仰ぐと僕の頭上にとんびが優雅な弧を描きながら白い風をまとって飛んでいた。

僕は急にどっと疲れが押し寄せてきたことに気づき、ザリガニ取りはあきらめて、家に帰った。

そして帰ってきてすぐに、居間で倒れ込むように寝た。

そしてその日の夜、自分の部屋でずっと眠っていた植物図鑑を開いてみた。
昆虫好きな僕に父親が昆虫図鑑と共にプレゼントしてくれたものだ。
今日見たキノコとあの赤い果実をつけた奇妙な植物を調べようと思ったのだ。

キノコの方は、おそらく紅天狗茸だったのだと分かった。しかし、あの赤く熟れた果実を付けた植物は、全くそれらしきものが図鑑には出ていない。

その植物は非常に特徴的な姿をしていたから、忘れようがない。

葉は、2枚しか付いていなかった。しかも小さい。
茎は非常にしっかりとしていたが、その先端についている大きく、赤い果実が本当に特徴的で、葉とのアンバランスさは、目に焼き付いていた。

未だに、その植物が何だったのかは分かっていない。

その後も、僕は何回も「赤屋根」に行ってザリガニを取った。ダニに咬まれたり、ヒルに咬まれたりもしたけれど、この時のような不思議な体験をすることはその後なかったし、妖精を感じるような森に迷い込むことも、二度と無かった。

しかし、不思議な森の妖精との会合は、私の記憶の中に生きている。
不思議なことは、実際にある。
そして、人知を越えた働きや感覚、そしてそれらが時に私の味方になってくれることがあることも、私は認めざるを得なくなったのだ。
この時、私はまだ8歳。

しかしだれもが皆、このような不思議な経験をしているのではないかと私は思う。

そうでなければ、幻想に準ずる世界など生まれようはずも無い。幻想世界への共感も得られないだろう。

東京都心の小さな部屋で夜を迎えている今の私でさえ、未だに風の囁きから何かを感じることがあるのだから。

私は部屋の窓を開け放って、夜の風を招き入れた。

作品名:机ノ上ノ空ノ日記 1 作家名:机零四