誘拐犯と結婚詐欺師の3日間
D1−B
「コウくん!」
コウの母親がコウを抱き寄せる。
「良かった、どこ行ってたの!」
「この公園で遊んでたって言うので連れてきたんです。お母様がいらっしゃってよかった」
コウが口を開く前に私は言い、コウに微笑みかけた。
「本当にありがとうございます」
母親が私に頭をさげる。コウとコウの母親の頭の向こう、公園の奥のベンチに、ふわふわした明るい色の髪が見えた。若い男。電話をしている。
「いえいえ。コウくん、またね」
「ばいばい」
振ってきたその手のひらにリンゴの皮のかけらが残ったりしてないか確認する。手を洗わせたから大丈夫なんだけど。確認は大切だ。
母親がもう一度頭をさげて、コウの手をひいて私に背を向ける。でっかいランドセルだな。コウはあんなにちっちゃい背中でどうやってあんなばかでかいもの支えてるんだろう。そこらの馬鹿な大学生よりよっぽど教科書も入ってて重いだろうに。
明日は女の子にしよ。
私も公園をあとにする。
作品名:誘拐犯と結婚詐欺師の3日間 作家名:真朱@博士の角砂糖