誘拐犯と結婚詐欺師の3日間
D2−A
やっぱりだ。あの人、子供さらってる。
昨日はランドセルに黄色いカバーをかけた男の子だった。今日は…今まさに女の子に声をかけている。赤い飾りのついたヘアゴムで髪をふたつに結った推定6歳の女の子。
「え?ああ、聞いてるよ」
携帯で電話しながら様子を見守る。誘拐犯はしゃがんで女の子と視線を合わせ、保母さんみたいな優しい嘘っぽい笑顔で話しかけている。20代後半くらいかなぁ。
「だからね、僕の親にも君のこと紹介したいんだ」
電話の向こうの顔も思い出せない誰か。君はバカだね。可愛いよ。
「え?式場?気が早いよ」
真面目なふりをすれば大概の真面目なバカはだまされる。こいつも、運命の人じゃなかったなぁ。
俺の運命の人探しにつきあってくれたお礼に、俺は女にプロポーズをする。女ってプロポーズされるのが夢なんでしょ?夢を与える仕事してる俺。かっこいいわ。
「お金用意した…って…ほんとに気が早いよ、まだ君の両親にもお会いしてないのに。でも、うん、ありがとう。僕も頑張るよ」
誘拐犯が動いた。少女の手をひいて公園から出ていく。
「うん、じゃあ、仕事に戻るから。うん、じゃあね」
さよーなら。
作品名:誘拐犯と結婚詐欺師の3日間 作家名:真朱@博士の角砂糖