誰か彼を探して
白い雪の塊が、藍色の空から
クルクルと舞いながら落ちてくる
鼻から冷たい空気が
スーっと入ると
体の中が、急に冷えて
心が洗われた気がした。
いつものように
家から猫のようにソーっと
忍び足で抜け出し、地上に飛び降りると
いつもの角まで走り出した。
まだ、誰も足跡をつけていない
アスファルトの上に積もった白い雪に
私のスニーカーの足跡がくっきりと
行き先を告げていた。
曲がり角で待っていたJ.J は黙ったまま、
私にチェックのフリースのマフラーを巻くと
手をつないで走り出した。
「寒いから、走ろう!」
「え~~?」
「公園まで走ろう!」
J.J は髪の毛も、眉毛も雪まみれで
私は、走りながら笑った。
雪の中の白い冷たい公園を
J.J と何回見ることができるのだろう。
こんなちっぽけな出来事が
最高に幸せと思えた。
J.J は子供の頃から、いじめられっ子だった。
私は……
私はいつもいじめられっ子に惹かれる。
彼らと遊んでいると、楽しいのだ。
いじめられっ子は、私だけ大切にしてくれる。
私だけ、特別に思ってくれる。
私は独占欲が強く、嫉妬深いのかもしれない。
多分そうだ。
J.J の心の闇など、考えていなかったのかもしれない。
彼のことを思うフリして、本当は自分のことしか
考えていなかったのかもしれない…。
夜は長い、暗闇は続く。
すべての音は雪と夜の闇に吸収され
世の中が二人だけのものになった。