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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅱ  ~儚く美しい聖なる時代~

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第2章 接触~Louis-Seydoux2~



 公爵家のパーティーは、ごく内輪どころか統也でも名を知っている各界の名士達も出席した華やかなものだった。

 客達の中から目ざとく統也を見つけた公爵は気さくに声をかけて来た。先日のくだけた出で立ちとは違う洗練された装いはこの男の本質を映しているかのようだ。

「来てくれてとても嬉しいですよ。君はスーツ姿もとても似合うんだね」

 本当だろうか。正装など滅多にしないしネクタイを締めたのなど郷里の同級生の結婚式以来だ。統也は公爵の言葉を世辞と取り、続く会話も軽く受け答えた。
 しかしルイ・セドゥはそんな彼をどうやら気に入ったらしい。賓客達に挨拶しつつ淀みなく会話を続け手放そうとはしなかった。

 君の姓のハシバミというのは落葉樹の名前だと聞いたことがあるよ、知らないかい?熟したハシバミからとった茶色がヘイゼルだよ・・・。
 
 延々と続く客達の最後に紹介された痩身の中年男は公爵の旧知の間柄でもあり、公爵が重役を務めている企業の支店長という事だった。若い頃はさぞ美形だったのだろうと思わせる整った風貌を留めてはいたが、肌の色は不健康な程白く、痩せすぎており、何やら蝋人形の様な造形だ。統也は何故かその男から敵意のようなものを感じた。

 まあ、そもそも場違いな所にいるのは俺だしな・・・。

 ふと、男の顔に違和感を覚え、統也は気付いた。支店長の左の目の周りは不自然に窪んでおり、その眼球は人工物だったのだ。最初にやけに自分が凝視されていると感じたのもその為だろう。


「ああ、イングリッド」

 公爵が後ろを振り向いて言った。

「私の妻です」


 ルイ・セドゥの背後から、彼女がふいに姿を現した。