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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅱ  ~儚く美しい聖なる時代~

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第2章 接触〜Louis-Seydoux1〜



 その男を見た時、統也は何故か既視感を覚えた。
 西欧の高く澄んだ空の下、爆音の名残の残るスタジアムの控え室で、まるで馴染みのバーにふらりと現れたといった風情の中年男は、レーシングチームの関係者達にあたふたと迎え入れられた。薄い色の銀髪にラピスラズリの瞳、50を少し過ぎたばかりに見えるその男は統也より頭ひとつ分は小柄だったが、それは西洋人の中にあっても大柄な部類に入る統也と比較しての事だ。痩せ気味ではあるが筋肉はしっかりついている事がポロシャツの上からでも分かる。人の良さそうな笑顔を統也に向けてお辞儀をしてみせた男は、しかし抜け目のない実業家だと言う噂だった。
 公爵家の血筋の人だぜ、統也と同じく東洋系の同僚は興味深そうにささやいてきた。一介のメカニックである自分にとっては全く違う世界の人間だという気がしたが、ではこの男が、カーレースを道楽に持ち個人的な出資も行っているという、ルイ・セドゥ・ヴァイヤン公爵か。
 ふと、あのピアニスト、桐永天音に似ているのだと気付いた時、公爵は統也の目の前で可笑しそうに声をたてて笑っていた。

「アマネの言った通りの男だ」

 そして面食らっている統也に向かって、自分は桐永天音の遠縁であり、旧知の間柄である事を告げた。

「アマネの娘に会いたがっている男がいると聞いて興味が湧いたんだ。期待以上で嬉しいよ」
 
 統也は一瞬息を止め、公爵を凝視した。

「・・・ご存知なんですか」

「とても良くね」

公爵は人好きのする笑みを崩さずに答えた。

「今度、彼女はごく内輪のパーティーに出席する事になっています。僕が個人的に援助している、君達のチームの花形レーサーも招いているよ。君も是非いらっしゃい」