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リンドウノミチヤ
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KYRIE Ⅱ  ~儚く美しい聖なる時代~

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第2章 接触~sione2~




 公爵夫人は静かに衣服を脱いだ。半ば強引に引きちぎられた為ボタンの取れたシャツを無表情に眺めた。そのまま下着も脱ぐと無造作にダストボックスに全て投げ捨てシャワールームに入った。降り注ぐ水は何故か氷の様に冷たく感じられたが、彼女は壁に身を預けたままじっとしていた。

 どのくらいの時が経ったか。呼び出し音に彼女は我にかえった。水にうたれながら、何時の間にか一時間以上経過していた。彼女はがくがくと震えながらバスローブに身をくるみシャワールームを出た。呼び出し音の主は、統也と入れ違う様に会社のオフィスに戻って行った秘書のガブリエルだった。

「大丈夫ですか?」

 秘書の言葉に一瞬、先程の事を思い出したがガブリエルが知る筈もない。そういえばガブリエルは何故か統也に敵愾心を抱いているふしがある。粗野な男ですね、統也を一度パーティーで見た後、あの秘書にしては珍しく一刀両断にそう評したものだ。

 秘書との通信を終えた後、彼女は倒れ込む様にベッドに身を横たえそのまま意識を失った。



 その後、彼女は悪夢にうなされた。幼い頃に死んだ筈の母親が血だまりに倒れていた。母親の人形の様な顔は崩れ四肢は潰れており、こちらに向かってさかんに警告を発していた。夢の中の彼女は母親が死んだ頃の少女に戻っており、母親を懸命に助けようとしたが何故か手足ひとつ動かせず泣きじゃくっていた。泣きながら、長い間ずっと泣いていないことを思い出した。背中が焼け付くように熱い。手を伸ばして触ってみると肩甲骨の辺りにびっしりと何かが生えておりしかもぬらりとした液体で濡れている。無理矢理引きちぎってみるとそれは赤く血に染まった羽根だった。彼女は叫んだ。誰かが慰める様に彼女の額に手をあてた。