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怨時空

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桜庭は中学生だと踏んでいたのだが、それはこれから起こるかもしれない火遊びの言質を取って置きたかっただけのことだ。これで、まさか中学生だとは思わなかった、という言い訳が出来たことになる。
「後悔してるんだろう。家出したことは」
「はい……」
少女は俯いたまま答えた。恐らく、母親と喧嘩でもして家を飛び出してきたのだろう。そして今は、それを後悔している。そんな雰囲気だ。桜庭は電話番号を聞き出し、少女にキー を渡すと、こう言った。
「家に電話しておいてやる。それに疲れているんだろう。俺達は散歩に行ってくるから部屋で休んでいろ」
桜庭は出口に向かった。少女が深深と頭を下げた。

 海岸の波打ち際を歩いた。二人とも黙って歩き続けた。あの少女も、今までものにしてきた女達と変わりはないはずだった。誰もが言葉で拒否しながら、下半身は濡れていた。やってしまえばこっちのものだ。そんな思いが、この旅で得た二人の共通認識だった。
 それでも桜庭には躊躇があった。幼過ぎるのである。不安はそこにあった。中条は押し黙り歩いていたが、突然立ち止まって振り返った。そして言った。
「本当に家に電話するのか。やっちまおうぜ、桜庭」
桜庭も立ち止まった。二人は見詰め合った。そして頷きあう。桜庭はくるりと踵を返し、ホテルに向かった。暫く歩くとやはり迷いが生じ、桜庭は中条を振り返った。と、後に続く中条の半パンの前がもっこりと膨らんでいる。もう後戻りは出来ないと思った。

 部屋の鍵は掛けられていなかった。二人はこそ泥のように部屋に入っていった。少女はぐっすりと寝入っている。ワンピースの裾がまくれ白いパンティが剥き出しになっていた。そしてその部分がもっこりと膨らんでいる。二人は思わず生唾を飲み込んだ。
 二人は目で合図するとそっと近付いていった。桜庭がそっと耳打ちする。
「口説くといっても、こいつはまだ子供で、到底合意に持ち込むなんて無理だ。無理矢理やっちまうしかない」
中条が血走った目で桜庭を見て大きく頷く。
「で、どうする」
桜庭が囁いた。
「お前は脚を押さえろ。脚をばたつかせられたんじゃ、たまったもんじゃない。先ず俺がやる。いいな」
中条は「ああ」と返事したつもりだが、喉がからからに渇いて声には出なかった。
 桜庭はそっとベッドに這い上がり、いきなり少女の両手を掴んだ。同時に中条が脚を押さえつける。少女がかっと目を見開いた。そして息を呑んだ。桜庭は一瞬微笑んで少女の顔に唇を寄せた。
「止めてー、お願い、やめてー 」
少女の悲鳴に度肝を抜かれた桜庭は焦りに焦った。中条が声を振り絞る
「桜庭、手で口を押さえろ、手で押さえるんだ。隣に聞こえちまう」
桜庭は「黙れっ」と押し殺した声を発し、少女の唇を手で覆った。少女は顔を左右に振って尚も声をあげようとする。と、中条が脚で蹴られて仰向けに倒れた。壁に頭を打ちつけた中条は、起き上がると少女の臀部を蹴りつけた。少女が苦悶の表情を浮かべ呻く。
 桜庭の手から唇がはずれた。少女が声を張り上げる。
「この、獣ー」
桜庭は、今度は「黙れっ」と声を出して言うと、拳で少女の頬を殴りつけた。一瞬、顔が歪んで、少女の顔が横向きとなった。ふくよかな頬がゆらゆらと揺れている。桜庭の獣性に火がついた。そして尚も殴り続けた。
「おい、やめろ、もういい」
中条の声に我に返った。桜庭は血だらけの少女の顎を掴みこう言い放った。
「おとなしくしろ、いいか、おとなしくするんだ。すぐに済む、ちょっとの我慢だ」
少女は体をだらりとさせ抵抗する気力を失っている。少女の頬に一滴涙が零れた。

 少女は泣き続けた。ベッドには少女の処女の痕跡が残されている。二人はさっさと用をすませると、ここをどう切り抜けるかを思いあぐねていた。途中で合意をとりつけようと必死になったが、すべて徒労にに終わった。重く暗い現実がそこにあった。
 先ほどからため息を繰り返していた中条がおずおずと口を開いた。
「まさか、中学1年生だなんて思わなかった。君だって言ったじゃないか、高校生だって。それに部屋で寝ていたってことは、誘いに乗ったってことだろう。大人の世界ではそれが常識だ。いきなり暴れるからこっちも驚いちゃって……つい……」
桜庭がベッドから立ちあがりながら口添えした。
「そうだよ、男二人の部屋でパンツ丸出して寝ているんだもの、誘っているとしか思えなかった。だから、最初に微笑みかけただろう。あれは、許してくれるんだね、仲良くしようねっていう意味だったんだ。まさか暴れるなんて思わなかったんだ」
桜庭の言葉は少女の軽率さを非難するような響きがある。これを聞いて少女が泣きながら抗議した。
「そんな言い訳、通りわけないじゃない。最初から二人して押さえつけていたじゃない。それって、強姦でしょ。犯罪ってことよ」
二人は押し黙った。何をどう言い繕うと強姦に違いないのだ。この場を何事もなく収めるなど神様でもできやしない。ではどうする。二人は口をつぐむしかなかった。頭を垂れ、反省した振りをして謝るしかないのか。少女の涙声が二人を襲う。
「いい人だと思った。いい人にめぐり合ったと思った。お母さんに電話するって言ってくれた。だから私は安心して寝ていたのに。それをいきなり襲うなんて最低よ。絶対に訴えてやる。警察に訴えてやる」

 中条の肩がぴくりと動いたかとおもうと、突然はいつくばり、土下座した。そして声を張り上げた。
「申し訳ない。本当に申し訳なかった。この通り謝る。だから、警察沙汰だけは勘弁してくれ。お願いだ。この通り謝る」
その変わり身の早さに、桜庭は唖然としたのだが、しかたなく桜庭もその横に並んで、頭を床に着けた。突然、少女がドアに向かって走った。中条は、すぐさま立ちあがると後を追って、少女の髪を掴み引き倒した。少女は仰け反って倒れた。
 中条が仰向けになった少女に馬乗りになる。両手で首を押さえ込み搾り出すような声を発した。
「殺されたいのか。強情を張ると殺すぞ。本当に殺すぞ」
桜庭には、それが街で喧嘩になると、中条がしょっちゅう言葉にだすこけ脅しだと分かった。しかし、二人にとって不幸だったのは少女がその言葉を本気にしたことだ。恐怖に顔を引き攣らせ、少女が叫び声をあげた。
「誰か助けて、人殺しー、人殺しー。誰かー 」 

 桜庭が慌ててベッドから飛び降り、少女の口を両手で塞ぐ。少女は激しく首を左右に振る。体全体で抵抗を試みる。両拳で二人の顔を、胸を打ち、爪を立てて肌を裂く、脚は覆いかぶさる中条の後頭部蹴る。口を塞いだ手がずれて、「人殺しー」と叫び声が漏れた。二人の目と目が合う。二人の手は知らず知らず力が入っていった。
 
 少女は死んだ。ぐったりと身動きしない遺体を前に、二人は途方に暮れた。沈黙を破って中条がうめくように言った。
「自首しよう。それしかない」
 桜庭は黙っていた。これまでの苦労を思い出していたのだ。受験戦争に勝ち抜いてきた。厳しい就職戦線も何とかクリアした。その苦労がすべて水の泡になってしまう。そんなこ
となど考えられない。桜庭が答えた。
作品名:怨時空 作家名:安藤 淳