烈戦記
『だから帯よ。残りの商人の説得をお前にも頼めるか?』
『え?僕でいいの?』
『あぁ。どうやったかは知らんが、実際あれだけの商人達を説得できたんじゃ。お前に安心して任せられる』
…安心は言い過ぎかもしれんが。
『わ、わかった!頑張るよ!』
帯は私の言葉がよっぽど嬉しかったのか、みるみるやる気を出した。
『…だが、簡単に頭を地面に擦り付けてくれるなよ?』
『…うん』
その後少しして凱雲が戻ってくるなり地面に頭をすり付けて謝られた。
そしてその後は私と帯と凱雲の三人で商人の説得に回った。
帯はその間何度も私や凱雲の所へ来て助言を聞きながらも必死に商人達を説得してくれた。
…なんと心地のよい時間なのだろう。
自分の息子とやる仕事とはこれ程にやり甲斐のある事だったのか。
私は息子が来てからは自分の情けない姿ばかり見せていて、なんとも不甲斐ない毎日を過ごしてきた。
だが、だからこそ私は本来の仕事をする姿を自分の息子に見られている事が嬉しかった。
そして誇らしかった。
そして日が落ちない内に北門の封鎖を完遂する事ができた。
後は派兵された兵士達を迎えいれるだけだ。
…この一件が終わったら、色々な事を帯に教えてやろう。
そして今まで見せてやれなかった父の後ろ姿を見せてやろう。
これがお前の父なのだと。
だが、現実はそれを許してくれない事を二人はまだ知る由もなかった。