烈戦記
もしかしたら柄の悪い筋肉隆々の男、もしくはその類いの見るからに危険そうな奴が…
どっちにしろ、ここで黙って部屋を取られては僕はおろか父さんまで恥をかく羽目になる。
それに悪い事をしているのはあっちで正当性はこちらにある。
最悪の場合は法に持ち込めばいい。
そうして僕は戸を思いっきり開けた。
『…え?』
最初に口に出たのはその言葉だった。
『あ?なんだよ、お前。』
そこにいたのは旅人でも民草でもない出自の良さそうな個綺麗な服に身を包んだ僕と同い年くらいの男がそこにいた。
『何勝手に入ってきてんの?ここ、俺の部屋なんだけど』
『は、はぁ!?馬鹿言え!!ここは元々僕が借りてた部屋だぞ!?お前こそ何で勝手に寛いでんだよ!!』
『…』
男はのっそりと布団から身体を起こすと、こちらをギロリと睨んだ。
思わず体に力が入る。
『お前、今俺に向かって馬鹿って言ったよな?』
『あ、あぁ言ったとも。だからなんだよ』
『お前、誰に向かって口聞いてんのかわかってんの?』
こいつ何を言っているんだ。
多分服装から見るなりある程度の身分なのはわかる。
それに比べれば僕の今の服装を見れば農民同然だ。
先日までこの服で生活していて、今日も着替える暇がなかったから機から見れば誰だって僕を農民と間違えるだろう。
だが、僕はこの街を管理する人、要はこの一帯で1番偉い人を親に持つ人間だ。
少なくともそんじょそこらのいい所の人間よりは格はある。
その僕に向かって彼は"誰に口を聞いている"と言うのだ。
僕は一息ついて胸を張って答えた。
『お前こそ、誰に向かって口きいてんだよ。僕はここの関主の一人息子だぞ!!』
どうだ。
びっくりしただろ。
『ぷっ、ははははは!!』
え?
『こりゃ面白い!!ここの関主の息子だって!?通りで田舎臭いと思ったよ!!ははははは!!』
『な、何が可笑しいんだよ!!』
可笑しい。
この街にいる以上僕の父さんより偉い奴なんていないはずだ。
それをこの男は聞いても驚き謝るどころか笑い転げている。
不思議そうな顔をしている僕に向かって彼が口を開いた。
『教えてやるよ!!お前が胸を張って威張った相手が誰なのかを!!』
『俺の名は羊班!!烈州州牧たる羊循の息子だ!!』