小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」

身代わりの王妃~続・何度でも、あなたに恋をする~

INDEX|29ページ/35ページ|

次のページ前のページ
 

 春花はあまりの苦悶にもがいた。まるで水中で呼吸することができないような感じだ。
「んっ」
 徐々に意識が鮮明になってくるにつれ、それが覚醒を促すほど深い口づけが仕掛けられているせいだと知った。
―なに、どうしたの?
 唇を塞がれていることに気づき、狼狽え、懸命にもがいたが、後頭部に手を回され、しっかりと固定されているため、身動きもままならない。
 確か一度昼過ぎに目覚め、空腹を憶えたので、光王がくれた紙包みを開けてみた。揚げパンが二個入っていて、春花はそれを両手で持って、ひと口ずつ囓った。とっくに冷めていたけれど、ほのかな甘さが落ち込んだ心と絶望的な哀しみをほんの少しでも救ってくれた。
 でも、到底一個すべてを食べきることはできなくて、また、そのまま眠ってしまったのだ。そこまでは憶えているが、何故、ここに自分ではない別の人がいるのだろう。そう考えて、春花はハッとした。ここを知っているのは春花の他には王しかいない。
 殿下がおいでになったの?
「あ―」
 絶望のあまり、悲痛な声が洩れた。
 王が美麗な面に酷薄な笑みを浮かべて見下ろしている。
「あまり手を焼かせるな」
 春花がまたたきをした刹那、大粒の涙がはらはらっとこぼれ落ちた。
「私はこれから、そなたを抱く。もし昨夜のように抗うのならば、酷い抱き方をすることになると思うが、私もできれば、初めて男に抱かれるそなたに手荒なことはしたくない」
 春花は小さく首を振った。
「お願いです、許して下さい。私はいやだと何度も申し上げているのに、何故、こんなことをなさるのですか?」
「そなたは望むと望まざるに拘わらず、私の妃となった。それは最早、避けられぬ宿命だ。もし私にそなたを納得させてやれる理由を言えるとしたら、それが妥当な応えだろう」
 許して下さいと、春花はうわ言のように呟きながら手をすり合わせた。
「良い子だから、大人しくしていてくれ」
 先刻とは打って変わった穏やかな―どこか懇願するような声が耳に注がれたかと思うと、視界が反転した。
「床の上では痛かろう」
 王は呟くと、自らの上衣を脱ぎ、ぱっとひろげて床に敷いた。有無を言わさず春花の身体をその上に押し倒す。
「いやっ、いや。誰か、助けて!」
 春花が烈しく抗い始める。王の切れ長の双眸が眇められた。
「どうでも、抵抗するというか」
 次の瞬間、春花は我が身に起きたことが信じられなかった。王は彼女の細い手首をひと纏めに掴み、袖から出した紐で縛ったのだ。
「解いて、解いて下さい。何で、こんな酷い―」
 春花は唇を戦慄かせた。堪え切れない涙が溢れ出し、頬をつたった。縛られるなんて考えもしなかった。
 だが、王は彼女の言葉など耳に入らないように、平然とチョゴリを引き裂いていった。衣の裂ける嫌な音が聞こえる。
「互いが快感を得られるようにするだけのことだ。閨の遊びゆえ、心配しなくても良い」
 王が端正な顔をぐっと近づけ、上から覗き込んだ。互いの呼吸すら判るほどの至近距離で彼が囁く。肌理の細やかな肌の感触を愉しむように、ざらついた親指の腹でゆっくりと撫でる。
「先ほどの問いの本当の応えを知りたければ教えてやろう。私がそなたを抱くのは他でもない。私がそなたを欲しいと思うからだ。そなたが王妃であろうが、女官であろうが、そんなことは関係ない。この身体を我が物にしたいと望むゆえ、私はそなたを抱く。納得したか?」
 納得なんて、できるはずがない。
「私の、私の気持ちは? 私はいやだと言ったっているのに」
 春花は泣きながら訴えた。
「私はこの国の王だ。たとえ中殿といえども、この国の民であれば、王の命には従わねばならない」
「たったそれだけの理由で?」
 王だから、春花の身体を自由にできる? そんなのは間違っている。怒りと悔しさ、情けなさがない交ぜになった気持ちで春花は王を睨みつけた。
「その愛らしい口から聞きたい。私を愛しいと言ってくれ」
「こんな一方的なことをする人を好きになんてなれません。あなたなんか大嫌い」
 春花は涙の滲んだ瞳で王を見据えながら言った。
 王の整った顔が一瞬、歪んだ。しかし、その面をよぎったのは怒りよりも絶望と哀しみのように見えたのは気のせい?
「判った。ならば、最早遠慮はしない。最初から嫌われているのなら、これ以上、そなたに気を遣う必要はないからな」
 そのひと言で、春花は自分の不用意な発言が王を完全に怒らせたのだと知った。
 ピリッ。再び衣を裂く音が聞こえ始めた。チョゴリもチマも下着もすべて剥ぎ取られ、全裸にされた身体を丹念に愛撫される。
 憤っているはずなのに、春花の素肌を這う王の手も唇も限りなく優しかった。昨夜のように乳首を吸われ始めると、一旦は止まっていた春花の抵抗がまた始まった。
「誰かっ、助けて。助け―」
 叫んでいた口に布が押し込まれる。
「そう騒がれたら興ざめだ。それに、この近隣には人家も多い。悲鳴を聞きつけた者が来ては後々面倒だからな」
「うっ、うぅ」
 春花の口から洩れ出るのは最早、くぐもった声ばかりになった。両のふくらみに十分に愛撫を施された後、蜜壺にそっと触れられる。
「相変わらず嫌らしい身体だ。胸を触られただけで、用意は万全らしい」
「―」
 酷い侮辱の言葉を囁かれ、春花の羞恥心はいや増す。無垢な少女は女体を知り尽くした男が言葉をも使って女を嬲り、余計に高ぶらせるのが閨の手練手管だとは知らない。
 両脚を抱え上げられ、背が反り返るほど高く身体を持ち上げられた。大切な場所がこの体勢では丸見えのはずだ。
―いやっ、こんなのは、いや。
 春花は泣きじゃくった。
 しかし、泣くどころではなくなった。唐突に激痛が秘所から下半身を貫いたのだ。その時初めて、彼女は自分の蜜壺を大きな猛々しい屹立が刺し貫いているのに気づく。まさに、下から串刺し状態にされているのだった。
―痛い!!
 狭い隘路をその大きなもので少しずつ押し広げられているような感覚だ。やがて激痛は疼痛に変わったが、それでも、痛むことには変わらない。
 布を押し込まれているため、悲鳴はくぐもった声にしかならない。と、口に銜えさせられた布が外された。
「そなたが女になる瞬間の可愛い声が聞きたい」
 言い終わらない中に、グッと身体を押し進められ最奥まで剛直でひと突きにされた。
「い、痛いっ。痛い、痛いの。抜いて、痛い」
 春花は大粒の涙を振り零しながら、烈しく首を振った。
「可愛い声で啼いたな。よしよし、良い子だ」
 宥めるように髪を撫でられた。
「少し動くぞ」
 言葉と同時に王が腰を動かし始め、ひとたびは治まりかけた痛みがまだぶり返してきた。
「痛い、止めて」
 苦痛に顔を歪ませた春花の額にも全裸の身体にも汗の雫が浮いている。おかしなことに、春花が?痛い?と泣いて訴えるほど、王の動きは烈しくなり、その憑かれたような表情は嬉しげにも見えた。
「憎くて可愛い、私の妻」
 こんなにも痛いのに、何故、この男は嬉しげに笑っているのだろう。どうして、私が泣いて痛いと言えば、もっと歓ぶのだろう。
 春花には理解できないことだった。苦痛を伴う責め苦はひとしきり続いたが、それでも、やがて終わりは来る。