魔獣物語〈序章〉
(やったか!?)
しかし、魔人は炎に包まれながらも、そのまま歩みを止めずに近づいてきた。
魔法そのものは成功したものの、魔人の強大な生命力は、その魔法の炎に打ち勝ったのである。
魔法の炎は、白煙となって消えてしまった。ダンの精神力がそれ以上、続かなかったのだ。
白煙を纏いながらダンの目前まで迫ってきた魔人は、左腕を振り上げ、それをダンに向かって振り下ろそうとした。
(駄目だ…。)
自分には躱しきれない。
仮にこの一撃を躱せたとしても、あの火炎魔法が通用しなかった以上、もうどうする事も出来ない。あれ以上の威力を持つ魔法を作り出せる力は、もう残っていないのだ。
ダンは、死を覚悟して目を閉じた。
次の瞬間、ダンの体に強い衝撃が走った。
(痛みを感じる前に死ねると思ったのに、意外と痛いじゃないか。)
そんな事を思いながら、ダンは魔人の斜め後方に吹っ飛ばされた。