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白にんじん
白にんじん
novelistID. 46309
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気まぐれ、神様、文芸同好会

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「どういうことだ、勝手に俺の名前を出してすでに作ってるのか?」
「そういうことだな」
「連次、勝手なことするなよ」
「悪いな」
「なんかもうどうでもいい。おい、中入ってみようぜ」
 それはもうどうでもいい、いやよくないのだが、とりあえず中に入るように皆に促す。鍵を開けて入ると、真ん中に大きなテーブルがあって椅子がその周りにあり、学校独特の、あのスチール製の本棚
が壁にそって置いてあった。中には何が入っているのかわからないが、国語科準備室なのでそういった関係の資料も当然あるのだろうけど、昔の活動記録みたいなものもあるのではないかと思った。
「なんか普通だな、もっといかにもってのを期待してたのに、こう文芸部らしさがないな。たんなる準備室みたい」
「だってただの準備室だろ実際」
 一応連次には突っ込んでおく。
「昔の活動記録は・・・探せばあるかもしれないね」
 有川さんはつぶやくように言う。しかしそもそも文芸同好会の活動というのは何なんだ。帰宅部onlyの俺にはわからない領域の話だ。
「おい文芸同好会って何やるんだよ、誰か教えてくれよ」
「創作文芸とか?」
「有川さんはそういうの向いてそうだけど俺にできるかなあ?」
 それは本心からの感想であった。
「別に読書しててもいいし、でも杉原くんにはラノベとかは似合わなそう」
「そんな適当でいいのかよ?」
「有川のお姉さんはそういってたけどなぁ」
 すかさず連次が言ってくる。部活に所属したことがないが案外適当なんだな、でも大体アニメとか小説に出てくる文芸部ってなんだか適当でゆるいイメージがある。あれってマジなのかよ。
「で、何すんのこれから。中入って終わりってわけじゃないんだろ、というか部長は有川さんでいいの?」
「ええ、これから作戦会議を開きます」
「ほう」
 連次が興味ありげに頷く。
「まあ中に入って座りましょう」
 有川さんに促され、俺達はテーブルに付いた。テーブルは長方形で、有川さんは窓側の短辺側の椅子に座った。向かい合うのが何か小恥ずかしいような気がしてあえて直接向かい合わない
長辺側の椅子に座ると連次も同じ事を考えていたようで同じように座った。
「まず部員をもう少し集めたいのだけど・・・」
 と有川さんはいうけど、部員が無くなったから部がなくなったわけでそれは要するに需要がないのではと言いたくなってきたが、うーん心当たりがないこともない。石口さんを連れてきたい。
生を実感できる場所、それは難しい。ならば部活で文芸に触れて生きがいを見つけてはどうか、なんか退職後のサラリーマンのカウンセリングをしているみたいで妙な気分だ。それは顔に出て
いたらしい。そんな簡単に済まない話なのだ、多分。
「おい千秋、誰か心あたりがあるのか」
「無いことはないな。本人はどう言うかわからないけど。連次こそ誰かいないのかよ。言い出しっぺだろ」
「俺はないな」
 あっさりというもんだからこっちは反応に困るってもんだ。
「でも量より質だとは思わんかね?」
 それは最低限の量が揃っての話だろうと言いたくなる。連次は有川さんがアレだとするとあまり入れたくないのかもしれないね。うまい舞台装置を考えたな。でも君はそこでうまく舞台をこなせるかな?
「おい千秋なんかいいたそうじゃないか」
「いやあ最低限の量が揃っての話だろ、その量より質ってやつは。第二次世界大戦の日本みたいなことを言うな。なんか笑えるな」
「まあまあ二人共。部員は少し心当たりがあるから掛けあってみます」
 二人に有川さんは言う。部長がそういうのだからそうするしか無いな。文芸部とやらにでしゃばるつもりはハナから無い。
「もう一つ決めたいことがあって、なんというか活動内容を」
「文芸に関することなら創作でも鑑賞でもなんでもいいんじゃねえか?」
 俺はすかさず発言する。なぜなら俺は文学的な質でないことは自覚しているつもりだからだ。
「姉の代もそういう方針だったようです」
「じゃあ決まりだな、連次はあれやりたいとかこれやりたいとかあるのかよ?」
「俺は創作よりも鑑賞がしたいね、それはそうと今日はこの後何するの?」
「とりあえず読む本もないし解散でいいんじゃない?じゃあまた明日」
 俺はそうやって切り上げて席をたった。三人というのは常にハブられ役が必要なのだ。俺はこの場に相応しくない。若い二人でこの後は適当に楽しんでほしい。席をたち扉へ向かうと背後から声がかかった。
「部員の勧誘楽しみにしてるから」
 部長は立ち上がったのか、椅子の動いた音がした。文芸部部長の熱い期待を受け、扉をあけて外に出る。家へ帰る。
 家に帰って考える、一旦は決めたものの、石口さんを文芸部に誘うべきか、なんと言って誘おうか逡巡した。しかし生を実感させる場所として部活とは安易である。しかしなんで人間が人間を救えないと信じて疑わない俺が石口
さんを救うなんて話を請けたのだろうか。他人が他人を救済することなど不可能なのだ。単に対価に目が眩んだからなのだろうか。他人が他人を救済できるとあってほしい、いや俺が石口さんを救えるとあって欲しいということなのか。
 他人が他人を救済できるとあってほしい、そんなヒューマニズム的な考えが自分にも多少はあるのかもしれないが、やはり俺は対価、この世の果てとか人間の真実とかが知りたいという欲求があるのだと感じる。
 さあ、どうやって有川さんを文芸部に誘うか。部活方面には疎い俺だが、これと無く誘うのが無難だと思う。石口さんにメールを送る。アドレスは前に交換してた。「件名:なし 本文:部活はどっか入ってるの?」
暫し待つ。「件名:は? 本文:特に入ってないけど何か」と返事が来た。「件名:なし 本文:俺の友人が文芸部を作って募集中だから入らないか?」と返信して暫く待つと、「件名:どうでもいい 本文:部活は」と
妙に倒置法を使った返事が来て少しおかしかったが、「件名:なし 本文:別に何しててもよさそうだぞ」と返信すると、「件名:あ、ふーんそういうこと 本文:わかった」と返信が来た。
 考えを読まれていたようだ。部活で生きがいを・・・とかなんか薄ら寒いけど半分は本気ではなかった。じゃあもう半分は本気なの?これで問題は解決するの?って聞かれたら微妙なんだけどなんとなく文芸同好会に
入って欲しかったというか、文芸同好会で同じ日々を過ごせば何か見つかるものがあるのではないか・・・的な。少し楽観視していた。
 どんな顔をして連次とか有川さんに紹介すればよいのかわからない。だって連次以外の奴は知らないし、石口さんとのアレを言う訳にはいかないだろう。
 文芸同好会で何をしようかな。文章を書いたり詩を描いたりなんかそういうのは性に合わないし、読むのも性に合わないな。連次は何をするのだろう。あの人をずっと眺めでもするつもりだろうか。そんなことはないけど多分。
 なんて考えてたら、連次から電話がかかってきた。
「よう元気か」
「なんだよいきなり、今日のこと?」
「まあな」
「まあズバリと行くと連次って有川さんのことが気になってるんでしょ、だから手を貸しただけなんでしょ」
「わかってた?」
「うん」
「本人にばれてねーかなー」