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白にんじん
白にんじん
novelistID. 46309
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気まぐれ、神様、文芸同好会

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 その後、それぞれの教室に戻った。もうすぐ一時間目が始まるから。それにしても時間軸もめちゃくちゃだな。やはり神様なのかな。いや、そんなことがあってたまるか。
生を実感させてくれる場所つったって、なんだか人生相談レベルというか禅問答な気がする。「屋上」は「死」に近いから、なんてそんな答えぐらいでは石口さんは納得させら
れなかったようだ。否定こそしなかったものの。
 生きるっつうこと。生きていることが当たり前だから生を実感出来ないわけで、死に近い場所に場所にいれば生を実感できる。という理論ではダメで、もっと違うアプローチ
が必要だ。
 それはそうと、俺はこの世の果て、人間の真実とかが知りたい。それはなんでかっていうと、多分自分を世界に対して過大に考えているからかもしれないし、斜に構えているから
かもしれないし、単に神様を目の前にしたために聞いてみたくなったのかもしれない。知ったからといってどうなるというものでもない。ただ人間としての根源的な疑問だ。
 ボーっと考えていると声がした。
「杉原くん」
 男の声ではないことは明白であった。一体誰だ。後ろ45度から聞こえたので振り向く。
 あー連次と時々話してた人、なまえなんだったっけ? 有川とかいわなかったっけ? たしかそんな名前の人だったと思う。たしか学級委員とかクラス代表とかそんな感じの
人ね、くじ引きでアホ引いたんだなかわいそうに。そんなこと言っても俺も図書委員引いてしまったんだけど。
「クラスマッチ何に出るの?」
 あー有ったなそういう行事。新入生どうし親睦を深める的な意味でサッカーとかソフトボールとかバレーとかクラス対抗でやるんだよな。こういうのを見るたびに運動神経ゼロ
の人間はうんざりする。運動神経ゼロの人のためにクイズ大会でもやってくれればいいと思う、ただ俺はクイズなんてやったことがないので撃沈する可能性大である。結局俺という
奴はこういう時貧乏くじを引くのであった。
「マトモに運動系は出来ないしなんでもいいよ」
 なんだか卑屈になってきて卑屈な答えで返す。
「そうなんだ」
 有川さんは俺の卑屈さを意に介さず答える。
「決めてないなら男女混合ドッジボールはどう?まだ決まってないし、連次君が結構いけるんじゃないかって言ってた」
「おいおい、いけるって囮的な意味・・・特攻隊か何かかよ」
 有川さんは苦笑いして否定しているようだがまぁそういうネタ要員っぽい。
「まぁいいさ、それでいいよ。」
「うん、よろしくっ」
 そう言うと有川さんは微笑んで女子のグループに戻っていった。石口さんと別のベクトルのかわいさがあるよね。髪は短く肩ぐらいで切りそろえられてあり、活発で明るい印象
を与える。うーん俺とは正反対ではないか。これは俗にいうフラグというやつか。いや恋愛は精神の病の一つだ。熱狂病だ。大概こっちが思っているほど相手は何も思ってない
ものだ。別に深い意味は無い。いかんいかん。自意識過剰が原因で心を乱してしまったようだ。
 そういえば有川さんとは席が隣である。今更気づくあたりがクラスで溶け込めてない度の高さを物語るであろう。クラスマッチでクラスに溶け込めると・・・いいですね。
 後ろの席は連次なのだ。後ろの席で人が座った音がしたのと気配で連次が座ったことを悟る。連次に聞きたいことがある。振り向いて言う。
「おい、なにを吹き込んだ?」
「なにって、適材適所的な何か? いやだって千秋飛んでくるボール避けるのはうまいし。ソフトボールとかでも玉飛んできたら取らずに避けるやん。いや向いてるって。期待してます」
 そういけしゃあしゃあと言うのである。いやまぁ俺という弾が打てない機関銃を使うには物理的に殴る、みたいな発想の転換は褒められるべきなのだろうが、本人にとってはあまりうれし
くないのだが反論することも別の競技を選ぶこともドッジボールを選ぶことと等しいぐらい嫌なのだ。ならもうこのままでいい。
「わかった、わかった、とりあえず特攻隊として燃料が尽きるまで避け続けるよ」
「頼むぞ、七組の勝利は君の双肩にかかっている」
「大袈裟で滑稽で恥ずかしくなってくるからやめろ」
「なぁ」
 珍しく小さな声で囁く。
「放課後空いてるか?」
 部活をしない自分の答えは決まっている。
「Yes」
「じゃあ放課後つきあえよな」
「わかった」
 何を考えているのかわからないが・・・特に用事はないし。まぁいいさ。
 そして放課後。連次が声をかけてくる。少し違和感があるのは有川さんが後ろに控えていたこと。でもまだ黙っておく。
「おい、行こうぜ」
「どこに行くんだよ、目的地を言え」
 突っ込みどころ満載なので突っ込む。
「元文芸部の部室さ」
「はぁ? なに? え?」
 頭のなかが疑問でいっぱいになる。まさか文芸部に入れというのか? いや、「元」とついていたから今は存在しない部活のはずだが。
「とりあえず行ってからの話だ。行こうぜ」
 腕を引っ張ってこの男ノリノリである。仕方がないね。色んな意味でね。
 連次の引っ張っていた腕をほどき、有川さんと連次についていく。特別教室棟へ行っているのがわかる。連次と有川さんは何も会話しない。連次が有川さんを意識しているオーラ満載でなんだか
見ていられない気分になってきた。こういうのに限って本人は気づいていないことが多い。連次もこういう一面あるんだね。やはり歳相応か。案外こういうことには慣れてそうな気がするんだが。
人間は見かけによらない。と言うか連次よなにか喋らないと気まずい空気になりかかっている。俺が少し助け舟を出してやろう。
「元文芸部ってことは、文芸部はいつまで存在していたんだ?」
「あ、有川さんのお姉さんの代で無くなったんだ」
 連次は少し早口で答える。少し話がわかってきた。
「つまり、ここにいる三人で文芸同好会を組み、あわよくば文芸部復興を願う、つうことかいな? というか連次は文系キャラだったかねえ」
「うるせえ、有川さんのお姉さんには少し借りがあってな、受験勉強を見てもらったんだ」
 連次が答えたあと、有川さんも申し訳なさそうに答える。
「うん、その読みどうりなのだけど・・・」
 と、有川さんは言いながら足を止め、こっちを向いて頭を少し下げて言った。
「どうか力を貸してくれないかしら」
 そう女子供に言われて無碍に断るのも気持ちが悪い。だいたい大したお願いというわけでもないからな。
「わかった。部活は帰宅部で決めていたし、特に予定はないから。いいよ」
「さすが千秋だな」
 連次が合いの手を入れる。やはり連次が有川さんを意識しているオーラを出している。まあがんばれ。
 そんなことを思ったり考えているうちに国語科準備室についた。おそらくここが元文芸部の部室なのだろう。いかに持って感じだし。
「ここなのか? 鍵は持っているのか?」
 二人に聞く。
「鍵はある、なぜならもう同好会として成立しているからだ」
 連次は答える。しかしこの男文芸という感じではなく理系に向いていると思うのだが、なぜそうまでして協力しているかは、受験勉強を見てもらっていたからだという理由ではないことは明白である。