小説が読める!投稿できる!小説家(novelist)の小説投稿コミュニティ!

二次創作小説 https://2.novelist.jp/ | 官能小説 https://r18.novelist.jp/
オンライン小説投稿サイト「novelist.jp(ノベリスト・ジェイピー)」
白にんじん
白にんじん
novelistID. 46309
新規ユーザー登録
E-MAIL
PASSWORD
次回から自動でログイン

 

作品詳細に戻る

 

気まぐれ、神様、文芸同好会

INDEX|2ページ/12ページ|

次のページ前のページ
 

「新入生総代君がサボっているところにたまたま私も来て、少し話していただけよ、連次くん」
「ああ、そうか・・・」
 彼女は扉の方へ向かって、扉を開けて何処かへ行った。連次と彼女は知り合いなのだろうか? 聞いてみる。
「なぁ、連次、あの人と知り合いなのか?」
「何、塾が一緒なのさ」
 あっけらかんといった調子で言ってくれる。でも声の調子が外れている。妙に思うが。
「今日の世界史自習だそ、先生都合でな」
「俺がここにいるってよくわかったな」
「そりゃ勘だ」
「そりゃすごいことだ」
 そういうことなら教室に戻ることにする。彼女とはもう少し話したかった気がするが、かといって何をああしていいのかよくわからない俺が言えた
ものではない。別に惚れた惚れないの話ではなく、興味が湧いてきたのだ。まあまた会えるかどうかすらわからない。その気になれば知り合い(なんだろう)
連次に頼めばなんとかなるかもしれないが、そこまでする気もない。でも正直惹かれるものがあったのも事実であった。
 でもあの声の調子外れさからいくと、なにか因縁の相手なのかもしれない。
 冷静に考えてわざわざ屋上から地面を覗きこんで「生を確認」する奴がマトモとは思えないが、だからこそ興味を持った。そんなことを考えていると、
連次が突如言葉を放つ。
「あいつに興味を持ったか?」
 連次に心を読まれたようで、恥ずかしくもあり、不快でもあった。
「まあね、多少は」
「ふーん」
 連次は意味有りげな声を出すが、その実意味は特にないのかもしれない。
「紹介してやろうか?」
 内心そういう流れになりそうで嫌だったのだ。そんな気はない。惹かれるものがあるのは事実だった。ただそれだけだ。屋上で授業をサボっていたら
勝手に来て話して興味深いと感じた、ただそれだけ。
「興味はあるけど断るよ、でも面白い人だよな、なかなか居ねえよあんな人」
「そうか」
「そうだよ」
 連次は残念そうだった。
 教室に戻ると、自習のくせして誰も自習などしていなかった。一応進学校でしょうが。めいめいのグループが机に集まって話したりしている、いつもの
 風景だった。ただ周りが授業中なので話は小声だった。なんで連次はわざわざ迎えに来たのだろう。まあいい。
「千秋は高校でも帰宅部かい?」
「さあな」
「将棋とか囲碁は?」
「そんな爺臭い趣味ないし、この年で初めても大して強くならんよ」
「なんでもかんでも強さを求めるだけがあり方ではないと思うんだけどな」
「まあそうなんだけど、負けたら悔しいやろ。しかしな、」
「ん?」
「あいつ何者なんだ、ホント」
「えらくご執心だな」
「あまりの異常さに驚いているだけだよ」
「それならいいのだけどね・・・」
「なんで図書委員なんかになってしまったんだ、クソ」
「変なところであみだくじのあたりを引くからさ・・・部活入らないならちょうといいじゃないか」
 変な所で運があるのだ。週一回は図書室で当番をしなければならない。図書室なんかに縁はない男なのにな。部活はいらない代償なのかもしれないが面倒だ。大体小学生の頃から委員会活動は面倒で避けてきたのに。
 適当に授業を終わり、放課後、今日は図書委員の当番曜日であることを思い出し、そそくさと図書室へ向かう。図書室なんか縁のない男なので勝手が
さっぱりわからないのだが、なんとかなるだろうと思いつつ、移動する。
 図書室は隣の校舎だ。移動する間にふと外を見やると体育会系の部活の歓声が聞こえる。ああいったふうな人間に俺はなれそうにないことに少し陰りを
感じるが、そんなの、人間の生まれ持った方向性、なんてものは小学校高学年になればすっかりわかってしまうもんで、いまさらどうこうなるものでもない。
 図書室へ着き、妙に風格がある扉を開けて入る。初めて入るけど、普通な感じで特に感じることはない。入って右側と左側には本の棚の大きいバージョンがたくさんある。
ストーブが部屋の中央にあり、その余った場所に大きな机が何個かある。人はあまりいなかった。
 とりあえず図書委員であるからにはカウンターというか受付係をやらなければならないので、そちらの方に視線を向ける。ただ驚いた。今日の朝見た彼女がカウンター
に一足早く座っていた。妙な縁を感じ、少し苦笑してしまった。と同時に、どんなふうに接すればいいのかわからなかった。
 立ち止まっても仕方がないので、とりあえずカウンター奥の司書、でいいのか、まあ担当の先生の詰所に向かう。向かう途中に彼女と目があった。彼女は笑っていた。
 心のおきどころがなくなった心地であった。なぜ笑うんだ。
 早速司書、なのかわからないが担当の先生のところに着いて、早速何をすればいいのか聞いてみる。
「あの、一年七組の図書委員、杉原です。図書委員って何をすればいいんですか、こういうの初めてなんですけど・・・」
 その担当の先生はおっとりとした口調で答えた、もっとも雰囲気からしておっとりとしていた。
「本の返却と貸出の処理ね、大体は。ときどき返却された本の陳列ぐらいかな。難しく考えなくていいわ。」
 早速教えてもらった。大体わかった。
 カウンターの椅子は二つある。一
 一人図書委員が選出されているから、二組で一セットなんだろうな。
 早速彼女の隣のイスに座る。妙な緊張感がする。それは俺の自意識過剰かもしれないけど。
「また会ったね」
 言葉を先に発したのは彼女の方だった。なんとなく予想はしていた。
「そうみたいだな」
 次に何を言っていいのかよくわからない。少し考えていると、彼女の方から口を開いた
「緊張してるね」
「まさか」
 精一杯の強がりだった。正直良くわからない人でだれだって俺と同じ立場になれば身構えると思うのだが。
 別の理由もあった。
 彼女はなかなかかわいいからだ。一般的な意味でのかわいさにプラスして、一般的な意味でのエキセントリック
さを持ち合わせた稀有な存在だ。
「連れて行ってくれないかな?」
 彼女はポツリポツリと口を開く。
「君なら生を実感させてくれる場所へ連れて行ってくれる気がする」
 面白いことと妙なことには周りが引いても首を突っ込む性質を持っている俺がそんなこと言われると、答えは決まっているだろう。
「ハハッ、いいさ連れて行ってやるよ」
「本当かい?何か見当でもあるのか?」
「今のところはない」
「こんなこと言うなんて変な人間だと思うだろう」
 彼女はいたずらっぽく言った。
「変なものは俺は大好きなんだ。平凡とか標準というものをとても嫌う。お前さんの名前を聞いていなかったな」
「一年六組、石口三冬」
「俺は七組の杉原千秋だ」
「よろしく、色んな意味で」
「話変わるけどカウンターに客が来ないな」
「そんなもんらしいわよ」
「そうかい・・・暇だなぁ」
 こうして今日の図書委員の仕事は終わる。結局一人本を借りに来ただけだった。日誌は石口さんにに何とか任せて帰る支度をする。
この図書館に漫画でもあれば暇を潰せるのだが・・・さすがに携帯ゲーム機をする訳にはいかない。暇つぶしも大変である。