あ~す
海(うみ)はずっとこの世界を眺めていました。
火山(かざん)のてっぺんから煙が止まないこの星を海は眺めていました。
いつまで経っても止みません。
海はつくりました。
木を、生き物を。
その生き物は、まだ海から大地に上がれたばかり。形も色も、まだ何に成長するのかわからない生き物でした。
海はその生き物を鬼(おに)さんと呼んでいました。
その鬼さんは、いつも一本の木(き)さんのまわりで過ごしていました。木さんも大地に初めて根をはり、鬼さんに続いて成長しました。
その木さんは実をつくりました。鬼さんは木さんと支えあって生きてきたのです。
鬼さんは困っていました。
いつまでたっても、火山が怒っているから。
木さんも困っていました。
いつまでたっても、火山が怒っているから。
鬼さんは火山に叫びます。
『かざーん。お願いだから怒らないでー』
木さんは火山に叫びます。
『かざーん。お願いだから怒らないでー』
けれども、その叫びは届きません。
何度叫んでも届きません。
とうとう、火山の怒りが、木さんを燃やしてしまい、根(ね)さんだけになりました。
鬼さんと根さんはそれでも叫びつづけました。
海も悲しみました。何度叫んででも届かない声。
海は思いました。どうして火山は聞いてくれないのか。
海は気づきました。鬼さんと根さんの声が届いていないことに。
海は気づきました。音(おと)さんがいなくなっていことに。
そういえば、音さんがいなくなってから、火山が怒り始めたと。
そういえば、音さんには、ハッキリした音が響く音さんと、いつもウトウトした音しか響かないもうひとつの音さんがいたと海は気づきました。
海は探しました。音さんを。
海は探しました。音のする場所を。
かすかな音がきこえました。それはとてもユックリとした音。
もうひとつのウトウトしたような音。
そしてそのウトウトした音は泣いていました。
『音さんが~い~な~い~よ~~。音さん~どこ~~』と
ウトウトしたような伸びた声で、もうひとつの音さんは泣いていました。
海はウトウトした音さんにお願いしました。火山に声を届けてほしいと。
海は約束しました。そのあとで、ハッキリとした音さんを一緒にさがすと。
ウトウトした音さんは眠たそうに言いました。
『ぜっ~たい~? や~く~そ~く~だよ~?』
音さんはウトウトしながら、鬼さんと根さんの近くで怒っている火山に向かいました。
鬼さんと根さんはまだ叫んでいます。
『かざーん。お願いだから怒らないでー』
鬼さんと根さんは困りはててます。
そこにウトウトした音さんがきました。
『い~ま~な~ら~……か~ざ~んに~き~こ~え~る~よ~』
鬼さんと根さんは喜びました。
鬼さんと根さんは叫びました。
『か~ざ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~……』
鬼さんと根さんは言葉を止めました。
それは、自分たちの声が眠そうだったので。
音をだしているのが、ウトウトした音さんだからです。
ウトウトした音さんは鬼さんと根さんに言いました。
『おに~さ~ん。ねぇ~さ~ん。ど~して~叫ば~な~いの~?』
鬼さんと根さんはもう一度叫びました。
『か~ざ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
鬼さんと根さんはハッキリと声がでません。それでも鬼さんと根さんは叫びました。
『か~ざ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
火山は鬼さんと根さんに気づきました。けれど、あまりにもウトウトした声だったので、何を叫んでいるかわかりませんでした。
海は気づきました。ウトウトしていることで、声の音も、噴火の音も、ウトウトしていることに。
ウトウトしている音さんは何故なのかわかりません。
ウトウトしている事に、鬼さんと根さんは驚いています。
海は急いでウトウトしないハッキリとした音さんを探しにいきました。
鬼さんと根さんは声が枯れてきました。
どんどん、太く、低い声になってきました。
『か~さ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
『か~さ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
ウトウトしている音さんも一生懸命に音を火山に届けました。
『か~さ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
枯れた声では、火山には届きませんでした。
『か~さ~~ん~。お~ねが~い~だ~から~~お~こ~ら~な~いで~~』
『か~さ~~ん~。お~ねが~いだ~から~~おこ~らな~いで~~』
『か~さ~~ん~。お~ね~がい~だから~~おこらないで~~』
少しずつ、少しずつ、声が響くようになりました。海がハッキリした音さんをみつけました。
『そんなウトウトした音じゃダメだぞ!! わしにまかせろ!!』
鬼さんも根さんも枯れた声で叫びました。
『か~さ~~ん!! おねがいだから~~おこらないで~~』
突然、火山が静かになりました。
ハッキリとした音さんに気付いたからです。
ハッキリとした音さんは火山にあやまってます。
『火山、ケンカしてすまなかった。さみしくさせて、すまなかった』
火山はハッキリとした音さんに言います。
『音さんがいなくてさみしかったんです。噴火したら、気づくかと思いました』
火山とケンカした音さんは、怒ってどこかに行っていました。
火山と音さんは仲直りして、この世界に音がもどりました。
鬼さんと根さんは、枯れた声でハッキリとした音さんと火山にお礼を言いました。
『おと~さ~ん。あ~り~が~と~』
『か~さ~ん。あ~り~が~と~』
おとうさん。かあさん。音さんと火山には、そう聞こえました。
音さんは、どうしてまだそんな声になったのだろうと思いましたが、すぐに気が付きました。
『ウトウトしている音がまだ眠そうなせいだな!! コラ!! ちゃんと音は出さないとダメだろう!! このウトオトめ!!』
ウトウトした音さんは悲しそうな声をだしてました。みんなの声がウトウトしてきました。
鬼さんは言いました。
『ウ~ト~ウ~ト~は~ガン~バッテ~ま~し~た~よ~おと~さん』
根さんは言いました。
『オ~ト~ウ~ト~は~ガン~バッテ~ま~し~た~よ~おと~さん』
ウトウトした音さんは言いました。
『おにぃ~さ~ん。ねぇ~さ~ん。ありがとう~~』
ハッキリとした音さんは言いました。
『お前たち!! なんだ? そのウトウトした声は……これはいい!! お前たちは今日からオトウトとオニイサンとオネエサンと呼びあうんだぞ。それから、これからわしの事はオトウサン。火山の事はオカアサンと呼ぶんだ』
鬼さんと根さんとウトウトした音さんは笑いました。
ハッキリとした音はんはずっとウトウトしている音さんに言いました。
『あ~は~は~は~は~は~……こら~~オ~ト~ウ~ト~~目~を~さ~ま~せ~』
海は言いました。
『オトウサン、オカアサン。あの、オニイサンもオネエサンも私から生まれました。ですので、親は私です』
火山(かざん)のてっぺんから煙が止まないこの星を海は眺めていました。
いつまで経っても止みません。
海はつくりました。
木を、生き物を。
その生き物は、まだ海から大地に上がれたばかり。形も色も、まだ何に成長するのかわからない生き物でした。
海はその生き物を鬼(おに)さんと呼んでいました。
その鬼さんは、いつも一本の木(き)さんのまわりで過ごしていました。木さんも大地に初めて根をはり、鬼さんに続いて成長しました。
その木さんは実をつくりました。鬼さんは木さんと支えあって生きてきたのです。
鬼さんは困っていました。
いつまでたっても、火山が怒っているから。
木さんも困っていました。
いつまでたっても、火山が怒っているから。
鬼さんは火山に叫びます。
『かざーん。お願いだから怒らないでー』
木さんは火山に叫びます。
『かざーん。お願いだから怒らないでー』
けれども、その叫びは届きません。
何度叫んでも届きません。
とうとう、火山の怒りが、木さんを燃やしてしまい、根(ね)さんだけになりました。
鬼さんと根さんはそれでも叫びつづけました。
海も悲しみました。何度叫んででも届かない声。
海は思いました。どうして火山は聞いてくれないのか。
海は気づきました。鬼さんと根さんの声が届いていないことに。
海は気づきました。音(おと)さんがいなくなっていことに。
そういえば、音さんがいなくなってから、火山が怒り始めたと。
そういえば、音さんには、ハッキリした音が響く音さんと、いつもウトウトした音しか響かないもうひとつの音さんがいたと海は気づきました。
海は探しました。音さんを。
海は探しました。音のする場所を。
かすかな音がきこえました。それはとてもユックリとした音。
もうひとつのウトウトしたような音。
そしてそのウトウトした音は泣いていました。
『音さんが~い~な~い~よ~~。音さん~どこ~~』と
ウトウトしたような伸びた声で、もうひとつの音さんは泣いていました。
海はウトウトした音さんにお願いしました。火山に声を届けてほしいと。
海は約束しました。そのあとで、ハッキリとした音さんを一緒にさがすと。
ウトウトした音さんは眠たそうに言いました。
『ぜっ~たい~? や~く~そ~く~だよ~?』
音さんはウトウトしながら、鬼さんと根さんの近くで怒っている火山に向かいました。
鬼さんと根さんはまだ叫んでいます。
『かざーん。お願いだから怒らないでー』
鬼さんと根さんは困りはててます。
そこにウトウトした音さんがきました。
『い~ま~な~ら~……か~ざ~んに~き~こ~え~る~よ~』
鬼さんと根さんは喜びました。
鬼さんと根さんは叫びました。
『か~ざ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~……』
鬼さんと根さんは言葉を止めました。
それは、自分たちの声が眠そうだったので。
音をだしているのが、ウトウトした音さんだからです。
ウトウトした音さんは鬼さんと根さんに言いました。
『おに~さ~ん。ねぇ~さ~ん。ど~して~叫ば~な~いの~?』
鬼さんと根さんはもう一度叫びました。
『か~ざ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
鬼さんと根さんはハッキリと声がでません。それでも鬼さんと根さんは叫びました。
『か~ざ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
火山は鬼さんと根さんに気づきました。けれど、あまりにもウトウトした声だったので、何を叫んでいるかわかりませんでした。
海は気づきました。ウトウトしていることで、声の音も、噴火の音も、ウトウトしていることに。
ウトウトしている音さんは何故なのかわかりません。
ウトウトしている事に、鬼さんと根さんは驚いています。
海は急いでウトウトしないハッキリとした音さんを探しにいきました。
鬼さんと根さんは声が枯れてきました。
どんどん、太く、低い声になってきました。
『か~さ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
『か~さ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
ウトウトしている音さんも一生懸命に音を火山に届けました。
『か~さ~~ん~。お~ね~が~い~だ~か~ら~~お~こ~ら~な~い~で~~』
枯れた声では、火山には届きませんでした。
『か~さ~~ん~。お~ねが~い~だ~から~~お~こ~ら~な~いで~~』
『か~さ~~ん~。お~ねが~いだ~から~~おこ~らな~いで~~』
『か~さ~~ん~。お~ね~がい~だから~~おこらないで~~』
少しずつ、少しずつ、声が響くようになりました。海がハッキリした音さんをみつけました。
『そんなウトウトした音じゃダメだぞ!! わしにまかせろ!!』
鬼さんも根さんも枯れた声で叫びました。
『か~さ~~ん!! おねがいだから~~おこらないで~~』
突然、火山が静かになりました。
ハッキリとした音さんに気付いたからです。
ハッキリとした音さんは火山にあやまってます。
『火山、ケンカしてすまなかった。さみしくさせて、すまなかった』
火山はハッキリとした音さんに言います。
『音さんがいなくてさみしかったんです。噴火したら、気づくかと思いました』
火山とケンカした音さんは、怒ってどこかに行っていました。
火山と音さんは仲直りして、この世界に音がもどりました。
鬼さんと根さんは、枯れた声でハッキリとした音さんと火山にお礼を言いました。
『おと~さ~ん。あ~り~が~と~』
『か~さ~ん。あ~り~が~と~』
おとうさん。かあさん。音さんと火山には、そう聞こえました。
音さんは、どうしてまだそんな声になったのだろうと思いましたが、すぐに気が付きました。
『ウトウトしている音がまだ眠そうなせいだな!! コラ!! ちゃんと音は出さないとダメだろう!! このウトオトめ!!』
ウトウトした音さんは悲しそうな声をだしてました。みんなの声がウトウトしてきました。
鬼さんは言いました。
『ウ~ト~ウ~ト~は~ガン~バッテ~ま~し~た~よ~おと~さん』
根さんは言いました。
『オ~ト~ウ~ト~は~ガン~バッテ~ま~し~た~よ~おと~さん』
ウトウトした音さんは言いました。
『おにぃ~さ~ん。ねぇ~さ~ん。ありがとう~~』
ハッキリとした音さんは言いました。
『お前たち!! なんだ? そのウトウトした声は……これはいい!! お前たちは今日からオトウトとオニイサンとオネエサンと呼びあうんだぞ。それから、これからわしの事はオトウサン。火山の事はオカアサンと呼ぶんだ』
鬼さんと根さんとウトウトした音さんは笑いました。
ハッキリとした音はんはずっとウトウトしている音さんに言いました。
『あ~は~は~は~は~は~……こら~~オ~ト~ウ~ト~~目~を~さ~ま~せ~』
海は言いました。
『オトウサン、オカアサン。あの、オニイサンもオネエサンも私から生まれました。ですので、親は私です』