Da.sh Ⅱ
・・・オレは・・・
「あっ、すみません」
座席上部にある荷物棚に、つま先立ってスーツケースを乗せようとしていた好美は、背後からスーツケースを支えるようにして、代わりに乗せてくれた男性にその立ち位置を空けた。
日立駅10時01分発の “スーパーひたち26号” はすでに動き始めている。窓際の指定席においていたハンドバッグを取り上げて腰かけると、その男を振り仰いで、改めて礼を述べた。
そして、好美は予想だにしていなかった驚きのためにか、大きく見開いた目で、何度もまばたきを繰り返している。
「・・・・・・」
何かを言おうとしたらしいが、声にはなっていない。
その男性というのは、オレのことである。オレは軽く微笑むと、好美の隣、通路側の指定席に腰を落とした。