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Da.sh Ⅱ

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 その時、「久しぶりだなぁ、強」という声がし、その方向に顔を向けた。縄を解かれた太郎さん、光圀さん、隼人さん達の背後から現れたのは、源さんの小柄な体だ。
 虎尾強は眉を寄せ視線を鋭くして、源さんを見やった。
「ワシのことなどはぁ、もう忘れたかもしれんなぁ」
 その物言いに、思うところがあったのだろう。
「あっ」と、虎尾強は一歩下がり、掌を前に突き出した。思い出したらしい。「申し訳! ありませんでした!」と、両手を脇に付け、頭を下げた。
「なんだ、覚えていてくれたのかいぃ。嬉しいねぇ」

 
 オレは、呆けたような表情になっていたに違いない。
「悪さもいい加減にしないとな、強よぉ。金貸しで、あくどく儲けてるんだってぇ?」
「いえ、そんなことは・・・」
「その鼻血を出している男、星慎之介と組んでさぁ、ここにいる健からぁ、かなりの金をまき上げたんだろうが」
「それは・・・いえ、金を貸したのは確かで・・・利子を付けてきちんと返してもらいました。ハイ」
「じゃぁ、健の借金は、もうないはずだな」
 それから源さんは、星に向き直った。

「ホシノテックの社長さんよぅ、この男が設計したシステムで、かなり儲けたんだろう、聞いたよ。それにぃ、かなりあくどい手を使っていたこともな、世間に知られたらぁ、どうなる?」
 ハンカチを鼻に押し当てたまま、源さんを睨みつけた。
「何者なんだい?」
「むかぁし、強と関わりを持っていたんだな」
「刑事だよ、元。私のせいで免職になった。マル暴の」
「ああ、足を洗うどころか、結構な身分になってるじゃぁないか、大したもんだな。おメェさんがチクッタことで、出世したってぇ訳だな」
 虎尾強は空を仰ぎ見た。きっと、誰にも聞かれたくない話なのであろう。
「慎よぉ、私の顔を立てて、このまま引き下がってくれんか」
 虎尾強は星慎之介に向き直って、頭を下げた。

 源さんと虎尾強との間に昔何があったのかは分からないが、星は「フンッ」と言ったきり、ズボンのポケットに手を突っ込んで、そのまま歩き出した。
 虎尾強も源さんに軽く頭を下げると、黙って歩き出した。状況がよく呑み込めていなかった若造たちは、あわててその後を追いかけた。

「昔ぃ、家吉会と深く関わり過ぎてさ。それだけのことだ。フフン」
 源さんは自嘲気味に笑うと、段ボールハウスがある方向に向かって歩き始めた。
 星の見えない都心の夜。明日香が明良君達を見る目には、星が輝いていた。

作品名:Da.sh Ⅱ 作家名:健忘真実