Da.sh Ⅱ
「待っとった」
ずっしりとした重々しい声で言う虎尾強と並んで、星慎之介。周りには5人の若造。明日香が痛い目をあわせた2人の若者の顔が見える。彼らは指を鳴らし、油断はしないぞ、という鬼気を放って迫って来る。ナイフによる恐怖を与えながら、近づいて来た孝雄という男が明日香の腕をつかむと、オレから引き離した。
「離せ――!」
男から腕を引き抜こうとしてもがいているが、力の差は歴然としている。
オレにも、太郎さんも隼人さんも光圀さんも、無論手は出せない。一発で打ちのめされることが分かっている。
もひとりのナイフを持った男がオレの喉元にピタピタと当てながら、右腕を捻り背中にまわして締め上げてくる。「イッ」と声を漏らしたがどうすればよいのか、なるがままだ。
「オラオラーッ、これ以上手間取らせんじゃなーい! この禿げネズミがァッ」
そうか、禿げネズミと命名したのは、この男か・・・。ナイフでオレの喉元を圧迫したまま、3人に顎を振って、虎尾強に向かって言った。
「社長、こいつら雑魚は、どうしましょ」
「フン、ウロウロと五月蠅い。縛ってそこらに転がしとけ。後で処分すればいい」
大切な営業車である自転車のスタンドを立てて、それから離れた太郎さんは、隼人さん、光圀さん共々に身を寄せ合った。準備よく用意していたらしい縄で、3人はぐるぐる巻きにされ草叢に連れて行かれると、ひと突きで押された拍子に転がった。「ひぇ〜」、「いたい」という声が上がる。
星がオレの目の前に顔を突き出すようにして、憎々しげに言葉を吐いた。
「お前には早々に消えてもらったほうが、よさそうだな。金はあきらめることにしたよ。銀行に残したまんまの金は、なんとかして取り戻せそうだし、なぁ」
そして「クソッタレガァ」思いっきりオレの横面を張ってから、背中を見せた。いきなりのビンタで、口の中に錆び臭が広がっていく。
また、喉元のナイフの感触に背中がぞくぞくとしていたが、あきらめがどうにでもなれという開き直りの境地を導き、ごくりと血の混じった唾液を飲み下すと、目を閉じた。
明日香はきっと、大丈夫だろう。
明日香、危険な目に会わせて、すまん。
口では言えないけど、自分で考えた、いい人生を築いてくれ・・・。
好美、こんなオレを、一時でも好いてくれて、ありがとう。苦労をかけてしまったけど、自分のことしか考えていなかったオレに付いてきてくれたこと、感謝している。幸せになってくれることを、祈っている。
今も、愛してる・・・?