Da.sh Ⅱ
車に乗せられて連れて行かれるのかと思ったが、違った。後ろから小突かれるようにしながら歩いた。
新宿駅から歌舞伎町を通り過ぎ、ここは大久保だろう。虎尾建設という看板が目に入ってきた。
シャッターが下りているビルの入口横にあるインターホンのボタンを押し、「連れてきました」と言うとドアを開け、「入れ」と強く肩を押された。ビルには、いくつかの会社が入っているらしい。その1階のひとつの扉をノックし開けると、中に押しやられた。
まず目についたのは、正面に掲げられている大きな額。
太い毛筆で『男一代』と書かれている。
その前にあるでかい机。腕組みをして座っているのは、1度だけ見かけた、若獅子会組長の虎尾強。その前にある、テーブルを囲んで置かれているソファの、背中を向けて座っているのは、星慎之介に違いない。
「けん〜」という情けない声がする方向を見た。
ふたりの男に挟まれて、光圀さんと隼人さんが、丸椅子を並べてくっつくようにして座っているのを見て驚いた。ふたりは公園に戻った翌日から、姿を消していたのである。
虎尾強がおもむろに口を開いた。
「約束だからな、ふたりは解放してやれ」
「これは、どういうことだ」
オレに度胸が付いたらしい。
「すまん」
「申し訳ない」
「フン、こいつら、金を要求してきた。もう少し資金が必要になった、とな。しかも、違う口座に振り込んでほしい、ともな。久しぶりだな、太田。いやいや、夢未来工房社長殿」
夢未来工房社長殿、と嫌みたっぷりの口調で振り向いたのはやはり、星慎之介。
「競輪ですってしもて、それで、つい・・・情けないことです」
「申し訳ない」