Da.sh Ⅱ
「太田、捜したぜ」
ドスを効かせたような声が頭上から降って来て顔を上げると、目を見開かせて腰を浮かせた。3年前、まとわりつき嫌がらせを繰り返していた男、金融会社の取り立て人だ。
「ちょっとそこまで、ご足労願おうか」
「今書類を持ってるなら、この場で返す」
暑くて眠れないためにベンチに座って冷えたビール片手に、昔、好美と明日香と一緒にキャンプに行った時のことを思い返しながら、虫の声に耳を傾けていた。
あれから3日経過したが、まだ明日香には会っていない。源さんがここに戻って来た日に明日香と会ってくれたが、「私から連絡するから、ちょっとの間待っててもらって」と言ってから、どこかへ行ってしまったという。
おそらく、好美に連絡を取って、一緒に来るのではないだろうか、と期待していた。その結果が、これだろうか。
「ちょっと、事が大きくなってな。会いたいというお人がいるんだよ」
「ここに連れて来てくれたらいい。誰だか分からないがここで会おう」
「つべこべ言わずに、来るんだ! それともォ痛い目にあう方が、よいのかナ」
男は凄んできた。
離れた所にあるベンチに座ってビールを飲んでいた源さんと太郎さんは、目をそらしながら様子を窺っているのが分かる。オレは片手を軽く上げた。
「ちょっと出かけます。借金取りに見つかってしまって」
男は尻に蹴りを入れ、オレはよろめいた。
「余計なことは言うな!」