Da.sh Ⅱ
1時間ほど待っていると、明良君、守君、隼人さんそれと源さんも伴って事務所に入ってきた。全員が集まったことになる。
オレ達の視線は、守君が提げている紙袋に注がれていた。しかし、その紙袋は意外と小さく、分担して持っているのかと彼らの手元を見てもそれらしき物はどこにも見当たらない。
「それ、金だ」と言って、紙袋を長机の上、オレの目の前にドン、と置いた。
「1億5千万って、こんなもんでっか」
と、隣に座っている太郎さんが袋の中を覗いて、首をひねっている。
「いいや、5千万だ。引き出したのはこれだけだ」
さらりと答える明良君を睨み据えて、隼人さんはブスッとしている。
「なんでですんや」
「一度にこれ以上引き出すと、怪しまれる。手続きが厄介になる」
「宝くじなんか、3億でっせ」
「それはそれ、これはこれ。入金があって全額をすぐに引き出すとなると、いろいろ調べられることもあるからな。それに、おっさんが計画してたのは5千だろ。これで、この計画は打ち切りだ。メンバーも解散。これは、処分する」
明良君は目の前で通帳を切り裂き、キャッシュカードを折り曲げた。
アアッ、アアーッという悲鳴がいくつも上がり、太郎さんは机に手を突くと、勢いよくパイプ椅子を蹴倒して立ち上がった。
「なにしょんねん、もったいないことを。せっかく苦労して金額つり上げたっちゅうのに」
「これが、俺達の請求書です」
太郎さんに応える者は誰ひとりなく、俊介君から受け取った交通費のレシートを加算していた守君は、その用紙を差し出した。受け取ったオレは、ひとつずつ確認していった。
掛かった実費、185,963円。人件費は入っていない。
紙袋から札束をひとつ取り出すと、封印を破って1枚ずつ机の上に重ねていき、余分に1枚足して20枚を守君に渡した。
「それと、これはあなた方の人件費と、協力や相談に乗っていただいたお礼です。ありがとうございました。あなた方のお力がなければ、オレひとりでは到底実行できませんでした」
札束みっつを取り出し、そのままを明良君に差し出した。
「それでよかったのかな」
「はい、十分です。お金よりも、奴に、星に仕返しをしたかっただけですから。それと、娘と暮らせること。これで満足です」
「源さん、太郎さん、隼人さん、光圀さん、ありがとうございました。お礼です。これだけですが、分けてもらっていいでしょうか」
ひとりひとりに頭を下げて礼を言うと、源さんにも札束ひとつを差し出した。
「ありがとよ。大したことは出来なかったが、こんなに貰っていいのかよぅ。でぇ、お前、どうするつもりだ?」
「明良君、オレ達を新宿中央公園まで送ってくれますか?」
紙袋の金をショルダーバッグに詰め直して、都内にある住まいに戻るという彼らも含めて、ブスッとしたままの隼人さん、ぶつぶつ独り言を言っている太郎さんを促して、8人が車に乗り込んだ。