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Da.sh Ⅱ

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走 れ!


「まだマスク、取るんじゃないぞ。監視カメラがある」
 機械を車に積みこみ鞄を放り入れると、肌に張り付いた手袋をむしり取り、さらにマスクに手をかけたところで、近付いてきた俊介君が低い抑えた声で囁いた。
 振り返ると、社屋の玄関口まで見送りに出ていた星慎之介と山科技術部長はまだそこに立っており、警備員と会話を交わしている姿が見えた。彼らに軽い会釈を送ると車に乗り込んだ。

 ホシノテックの駐車場から出るとすぐにマスクをはずし、川沿いの道をしばらく走ってから車を止めてもらった。上着を脱いでカイロをむしり取ると、ぬるくなったスポーツドリンクを一気に飲み干した。
「ファ――ッ、やっと生き返ったよ」
「健、どやった? ワテのしゃべくり」
「私の手さばき」
「ああ、ふたりともよくやってくれました。ありがとうございます」
 汗を拭き取り下着を変えながら、後部座席にいるふたりを振り返って頭を下げた。くずれた表情を隠すためなのか、いつも表情を変えない光圀さんは、頭の後ろで両手を組みシートにもたれて口笛を吹いている。

「そやけど、受信側の機械がウンともスンともいわん様なって、生きた心地せんかったわ、なあっ。10分くらい、か。ワテも汗びっしょりになってしもたわ。このまま動かんかったらどないしょ、思て」
「2分ほどですけど」
「すまなかったな。駐車場ではまずいと思って、この場所に車止めて操作してたんだけどさ、窓を叩く奴がいて、ギョッとしてすぐにパソコン閉じたさ。そしたら、『この先、車通り抜け出来ますか』だぁ〜って。見られたかと思って冷や汗かいたぜ。うん、やばかったよな」
「しかしすべて、あなた方のお陰です。ありがとうございました。特に俊介君には」
「今頃、明良と守が金を手にしてるだろうさ。隼人さん連れて、青梅支店の近くで待機してたから。入金されたと聞いて、すぐに連絡入れといたからさ」
「1億5千万ですな」
「いちおく、ごせんまんえん! 健、分け前、たんまりと期待してまっせ〜」
 オレ達は浮かれ気分で横浜に向かった。光圀さんは、水戸名跡に立ち寄ることは、もう口にしなかった。
作品名:Da.sh Ⅱ 作家名:健忘真実