Da.sh Ⅱ
数週間前までは、どこなのか分からないが、飯場にいた。飯とねぐらの心配をする必要がないのは、助かる。
山に入って、枯れ木や枯れ枝を撤去していくのが仕事だった。
それがある日写真家が来て、枯れ枝を川に投げ入れてくれ、という要望に応えてやると数日後、契約期間が残っているにもかかわらず全員解雇されて、元いた寄せ場(日雇労働市場)に、車に乗せられて戻されたのだ。
しばらくはその報酬でドヤ(簡易宿泊所)に泊まっていたが、仕事が見つからない。40歳を過ぎると、なかなか仕事を回してもらえなくなる。若者優先だ。ほとんどが、建設現場の解体か倉庫での運搬などのきつい力仕事だから、到しかたないのかもしれないが。
警備や清掃の仕事にありつけるのは、おおよそ週1である。それだけ仕事を求めている者があふれている、ということだ。
「お前、新聞に載ってたろ」
炊き出しの列に並んでいると、おにぎりとみそ汁の器を持って通り過ぎようとした男が、横に立ち止まってしげしげと顔を覗き込んできて、そう言った。名前は知らないが、一緒に土木現場で働いたことのある男だ。
「むざむざ写されやがって、ヘンッ、おかげで求人が減ってしまったじゃないか」
なんのことか分からず、その時は黙ったままでやり過ごしたが、気にかかっていた。
図書館でその新聞を捜し出すとナント、枯れ枝を川に向かって投げ入れている写真の主は、まさしく、オレだ。うつむいているので顔は分からないが、オレを知っている者が見れば、体つきから分かるだろう。
しかも、放射能汚染の除去作業、だって!
そんな話は、手配師からも現場監督からも聞いてはいなかった。どこに連れて行かれたのかも聞いていない。手配師の言うままに、バンに乗り込んだだけだ。
だが・・・クソッ、気に入らんのは記事を書いた奴らだ。放射能のことはさして気にしていない。この体はいつどうなってもかまわない、と思っているからだ。
しかし、生きていくには、金がいる。今必要なのは、金だ。