Da.sh Ⅱ
さらに1分ほど経過した頃、シャラン、という機械音がしたかと思うと画面下が点滅を始め、先ほどと同じ図面と数字と英字の画面が表示された。
きたっ! 拳を緩め安堵の息を吐いた。
「来たようですね」と言いながら、太郎さんは光源のスウィッチを押した。
強烈な光がやはり数秒間、奔った。
光圀さんがその間に近づき、試験体を平台の上に置くと、元の場所に下がっているはずである。どんな時にも落ち着き払って、表情を崩さない光圀さんである。しかしオレの頬は次第に膨らみ、目尻が下がってしまっている。いかん。3人は機械を注視していて、オレの方は誰も気にしていないだろうが。
光が収まりしばらくすると、くらんでいた目が回復した見学者から、先ほどにも増した感嘆の声が上がった。
「ウオオオ――ッ、すゥごい! 素晴らしい!」
星は手を叩いて太郎さんに近づくと握手を求め、その後オレの方にもやって来て、手を差し出してきた。
オレはニヤリとして立ち上がると、強く握り返した。
「この機械に、5000万出しましょう」
オレは、その言葉に満足した。
「5000万? 少ないでんな。よその会社にも当たってますんや。そこは1億出す、いうてましたさかいな」
おいおい、太郎さん、欲を出したら・・・しかも大阪弁丸出しで。
「1億5000万! これは研究費込みで、完成させていただくということで、すぐに支払いますよ。さらに技術料として、5億出しましょう。いかがですかな。三村君、今すぐに1億5000万、大丈夫だね」
「は、は、はい」
「いかがですかな」
目をぎらつかせている星慎之介は、オレに向かって問いかけている。オレは視線をからませたまま、深くうなずいた。それを太郎さんが引き取って、話を続けた。
「社長も了解したようですな。では研究開発費として、1億5000万円を出資していただくという事で、契約に応じましょう」
「契約書を作成する間、お待ち願えますかな。その間に御社の口座に振り込む手はずを整えましょう。三村君、任せたよ」
三村経理部長は「はい!」と言って勢いよく立ち上がると、こちらに頭を下げてから部屋を出ていき、残った星と山科技術部長は機械に近づいて、腕は後ろ手に組んだまま、かがみこむようにして目を近づけ、機械全体を熱心に眺めまわした。