Da.sh Ⅱ
太郎さんの長口上が一段落したのに合わせて、視線を回した。
ホシノテック側の人々は空いているソファに座り熱心にメモをとりつつ、時々熱い視線を送っては深いため息をついている。
太郎さんもホシノテックの面々を見渡した後、再び口を開いた。
「依頼者から受けた資金は、この試作機のためにすべて使い果たしてしまった上に、持ち出し分もばかにならない。我々の、採算度外視した執念ですな。このまま世界で初めての試み、どこにもない発明をストップさせてしまうことになってしまうのは、誠に至極残念です。
そこで! 私どもで出資者を探し求め、より完璧な物を、納得いく形の物を作り上げたい! というわけです」
「その物質伝送機、完成すれば商業ベースに乗せてもかまわないわけですな」
「もちろんです。投資いただいた上でお譲りしたいのは、完成させた機械のみなのですが、技術もろともお譲りする場合には、さらに金額の相談が必要かと思います。
まずは、実際に転送してご覧に入れましょう」
フーッ、とそっと溜息をつきながら、長々と続いたプレゼンが終わったのを見計らい、ゆっくりと立ち上がってふらつきながら機械に近づくと、2台をケーブルで接続してから、それぞれの電源を入れた。
「起動するまでに少々時間がかかります。ま、パソコン並みですな」
パソコンである。ただの。
古いパソコンのディスプレイ部分のみを利用した、それに俊介君が工夫を凝らしてくれた “物質伝送機” だ。そして、車の中にいる俊介君が遠隔操作する。ここでやり取りされている会話は、機械に取りつけている発信機を通じて、彼は受信しているはずである。それとさらに、我々にとっては目くらましのための、説明上では、物体を原子化するために必要なエネルギービームを照射するための、強烈な光を発する光源があるだけの機械だ。