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Da.sh Ⅱ

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「社長は風邪がひどい状態なのですが、ホシノテックの皆さまがせっかく時間をやり繰りしてくださったので、穴をあけるわけにいかない、と言って無理をして出て参ったのですが、お話はすべてワタクシが、変わってさせていただきますので、どうかご容赦ください」
「ゴッホ、マスクのままで失礼します、ゴホゴホ」
 辛そうな表情を作り、声を喉に絡ませた。
「社長さん、お身体の具合が悪い中、よくお越しいただきました。どうぞ、ソファにお掛けになっていてください」
 礼をして、窓に近い壁際に寄せられているひとり用ソファに深く腰掛けた。背中のカイロが肌に押しつけられるので浅く座りたかったが、それではまずいと思う。
 とにかく、あ・つ・い。汗が背中をツーッと滴り落ちてきていた。

「それでは早速、お見せ願えますか。社長さんもお辛そうですから」
「それでは」と言って、光圀さんがカバーをはずした。
 太郎さんが、機械を作り出したいきさつを説明し始めた。
 
「これが、物質伝送機、送信する機械と受信する機械です。いえ、どちらも送受信は可能ですが、今はその様にしておきます」
 2台の機械の間に立って、それぞれを指し示した。
「さる富豪、名前は申せませんが、アメリカの経済誌『フォーブス』世界長者番付に名を連ねている富豪からの内密の依頼でして・・・試作を重ね失敗を繰り返しながらも、ついに成功したという次第で。
 しかし! その成功を目にする寸前にその依頼者は、他界してしまったのです。遺骨は宇宙に散骨してくれ、と遺言していたというほどの、珍しい物好き」
 オレは咳をして、余りくどくど言うな、という合図を送った。しかし太郎さんの舌は滑らかだ。

「内密にされていたのは、家族をびっくりさせるんだ、と。遠方にいるお孫さんに、いろいろな物を瞬時にして送ってやるんだ、と申されていました。亡くなられたと知って遺族の方々に開発資金の増額を申し出たのですが、撥ねつけられましてな、その様な夢物語には付き合えない、と。
 この仕事は、そのまま引き下がれないところまで、進捗しておりました。このまま放りだしてしまうには惜しく、時間とお金をやり繰りして機械はなんとか成功にこぎつけたのですが、伝送できる物体が小さい。このままでは市販しても売れない。また私どもでは、生産するような設備などない。依頼者の希望される物を設計し、手作業職人技で作り出すことだけが仕事ですから。
 しかし! このままではせっかくの発明が埋もれてしまう。も少し改良を加えて、も少し大きな物体を送れるようにしたい、と思っているわけです」
作品名:Da.sh Ⅱ 作家名:健忘真実