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Da.sh Ⅱ

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 警備員の指示に従って、太郎さんと光圀さんが1台ずつ機械を抱えてエレベーターに乗り込むと、展示品にもう一度一瞥をくれてから、書類や伝送する試験体を入れた鞄を下げてその後に続き、扉を閉めた。
 箱の中の空気は、各自の緊張をほぐしてはくれなかった。
 会話もなく、深く息を吸っては吐く鼻息だけが聞こえ、階数表示を見つめていた。
 3階に到着すると黙ったまま廊下に下り立ち、警備員から指定されていた応接室の前まで行くと扉を押し開いて、ふたりを先に通した。
 10畳ほどの広さの部屋の中は、応接テーブルとソファは壁際に押し寄せてあり、あらかじめ用意してもらっていた小さい机2台が、それらに取って代わっていた。2台の机を少し離してその上に機械を設置すると、接続した延長コードのコンセントにプラグを差し込んだ。
 物質伝送機の存在は、極秘扱いを約束させている。立ち会いは最小人員のもとで行う。
 
 オレは夏風邪がひどい状態だからといって、大きなマスクで顔を隠したままだ。冷房が効いている部屋でも汗と顔のほてりを出すために、背中にカイロを貼り付けている。太郎さん光圀さん、それに俊介君までもが面白がって、カイロを背中に張り付けたから、合計三つだ。
 すぐに体がほてり始めた。熱中症対策として、あらかじめ体内に水分を貯えるためにスポーツドリンクをがぶ飲みし、気合を入れて、車を離れてきた。
 会話はすべて、太郎さんが引き受けてくれることになっている。オレは時々、咳をして合図を送ればよい。

「手袋、取るんじゃないぞ」
 俊介君が、適切なアドバイスを出してくれた。「絶対に、指紋は残すな」というのは必要条件だ。
 まもなく揃って現れたホシノテックの重役3人、社長の星慎之介と、技術部長の山科、それと経理部長の三村それぞれが自己紹介した後、代表者としてのオレはそれぞれの名前だけを小さな声で告げ、白くて薄い化繊の手袋をしたまま、星と握手を交わした。星慎之介が応接室に現れてからずっと、強くした視線を星の顔に当てていたが、手を握った時に星の目の奥を覗き込んだオレは、ようやく目元をゆるめた。
作品名:Da.sh Ⅱ 作家名:健忘真実