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Da.sh Ⅱ

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 いつの間にか8月。
 太郎さん、光圀さん、そしてオレは、俊介君の運転で、茨城県水戸市にあるホシノテックに向かった。

 星慎之介!
 夏休みの間に決着をつけてやる!
 明日香と暮らせる目途を立てて、学校をなんとかしてやりたいと思っている。できれば・・・好美、とも。

 常磐自動車道を水戸ICで降りしばらく進んだ、那珂川に面した場所にそれはあった。偕楽園や弘道館、水戸城跡の表示が見えると、光圀さんは、「帰りには是非、立ち寄りましょう」とはしゃいでいた。
 

 3階建の3階全面を、社長室と会議室・応接室が占めている。設計などの業務は2階で行っているらしい。1階入り口を入った所には警備室と、[工作室]・[倉庫]などと表示されたプレートが貼り付けられている部屋がいくつかあった。
 フロア奥、エレベーターの横手には、工場の生産ラインや工作機械などの雛形をケースに入れて展示している。
 その中のひとつがなんとなく、昔オレが設計したシステムであるような気がする、展示品だ。近づいてよお〜く見た。
 
 やはりそうだと確信した。設計までを完成させたブツであったが、退職間際だったこともあり、誰が引き継ぐのかは分からなかったがとりあえずは上司に、各部の詳細を説明した。制御部には、品質と生産性を安定させるための工夫が、いくつも施してある。
 結局、星が自分のアイデアとして、横取りしてしまったのかもしれない。いや、会社を立ち上げた最初のプロジェクトが、これだったに違いない。
 当時のオレは、自分で設計事務所を構えることだけに執心していて、設計を完成させたラインを自分の手で押し進めていくことなどには、心及ばなかった。「あなたは、経営者の器じゃないわよ」と言った時の好美の姿が脳裏によみがえった。
 そして改めて今、その言葉は真実を突いていた、オレには貪欲さと才覚が欠けていたのだ、ということに思い到った。
作品名:Da.sh Ⅱ 作家名:健忘真実