Da.sh Ⅱ
源さんは、グラスに残っている、小さくなった氷と水を飲み干してから話を続けた。
「ミクちゃんが言うには」
「明日香です」
「んぁ?」
「本名」
「あすか・・・いい名だ。それにぃ、かわいい。お前なぁ、金、借りてたのか?」
「星からは借りてません」
「ハハ〜ン、闇金か」
オレは、黙ってうなずいた。
「星は、明日香ちゃんに言ったそうだ。父親は借金で夜逃げした、ってな」
「なぜ星が、それを。明日香は、借金のことは全く知らないはずです。妻も、絶対に知られたくない、悟られまいと隠していました。なぜ、星が知ってるんだ!」
拳を作って、テーブルを叩いた。
「それよ」
源さんは空になったグラスを持ち上げて中を覗き込むと、コースターに戻した。そして、水の入ったグラスを取って口に含んだ。
「ほれぇ、覚えてるかぃ。若獅子会の虎尾強」
「はい、星と一緒にいた」
「若獅子会は建設業の二次あるいは三次請けなんだが、裏ではぁ、金貸しもやっている。闇金、だな。お前ぇ、そこにも手を付けたんじゃぁ、ないのかい」
「かも・・・」
「それとぉ、これはワシが知り得たことなんだがぁ、星は今、事業所の社長をしている。ホシノテック、という会社だ」
「なんの?」
「さぁな、三ツ星の子会社で、設計なんぞしてるらしいが、ワシには分からん」
「設計・・・機械の設計に違いない。ということは、オレのライバル会社。妻との結婚、暴力団、借金・・・クソゥ、なんだか、オレは星に嵌められていた気がする・・・」
「・・・そういえば奴、オレの独立起業を、えらく勧めていたよな。会社が仕事を回してくれるように取り計らってやってるから、って」