Da.sh Ⅱ
ネット上で見つけた写真を父親だと確信して、いろいろと調べたらしい。
ネットで質問したらすぐに答えが返ってくるってぇ、なぁ。にちゃんねるで、といってもNHKじゃないぜ、会話もできるのかい。よく分からん時代に、なったもんだ。
新宿はぁ、お前さん、学生の頃にいた街かい。そんな話を聞いた記憶から、目星をつけてやって来たぁ、って。
もう、1週間になるそうだ。金を使わずに滞在する方法も、ネットが教えてくれたってぇ、な。
「そこまでして、なぜ家出したのか、話しましたか?」
視線をはずしたまま質問した。
「ママが再婚するの、って」
「そうですか。あいつが幸せになってくれるのだけを願っていましたから・・・仕方ないです」
「まぁ、この先を聞けって」
源さんはアイスコーヒーのグラスをグイッと傾けると、氷をかみ砕いてから続けた。オレも、氷が融けて薄くなっているアイスコーヒーに口を付けた。
「いつかお前さんが話していたぁ、三ツ星にいた星、ってぇ男がお相手だ」
「えっ!」と顔を向けた。源さんは、目はオレに向けたまま、うなずいた。
「星慎之介、って言ったよな。ずっと母親とふたり、アパートで暮らしてるそうなんだが、星が時々やって来るんだとよぉ。父親になるかもしれない、と聞かされてはいたんだが、ひとりで留守番してる時にやって来てさぁ、不意に抱きつかれて、やらしいことされそうになったんで、逃げ出したんだと。わざとひとりの時を狙ってやって来たに違いない、と言ってる。誰もいない時に家に戻って、必要な物だけ持って、ここ、新宿に来た。母親にも、黙ってな」
「オレが、オレが不甲斐ないばかりに、娘にまで」
オレは涙が出て、それ以上のことが言えなかった。好美の実家で暮らしているものとばかり思っていたのだが、やはり、つらいものがあったのだろうなぁ。
「健よぉ、星慎之介、というのはな、三ツ星の創業者の孫で、手のつけられん放蕩息子だったんだな。昔ぃ、家吉会の使い走りだったそうだ。えらく粋がってたらしい」
「なぜ・・・分かったんですか?」
「フフン、だてに情報を集めてるわけじゃぁ、ない」
「もっと知ってるんでしょ、すべて話してください」