Da.sh Ⅱ
「髪がふさふさしてた頃も、あったんだな」
オレはそっぽ向いていた。
「写真、見せてもらったよ。初音ミク、って名前なんだな」
黙っていた。
「根掘り葉掘り聞くわけにゃぁ、いかんだろ。時々、探りを入れながら話していたんだがぁ、それらを繋げると、こういうことだ」
と言って、源さんは語り始めた。
顔は背けたまま、耳だけをダンボにして聞いた。
高校生だってな。授業で放射能のことを学び、グループ研究で除染について調べてたんだと。
便利な時代なんだな。ネット、とやらで、なんでもすぐに調べられるのかい。
その時に見つけた写真があって、うつむいてはいるんだが、なんとなく自分の父親に似ている。拡大してよ〜く見ると、耳の下にある傷跡に気付いたんだって。自分が傷つけてしまった傷だから、すぐに分かったそうだ。
オレは、耳の下に手をやった。
明日香がふたつみっつの時だったか、オレは、ガンダムの模型を作るのに夢中になっていた。
ふと、そばに来てナイフを持っている明日香に気づいたオレは、急いで取り上げようと「アブナイ!」と大きな声を出して、腕を急に伸ばしたのがいけなかった。びっくりした明日香が、ナイフを握ったまま腕を振り回した拍子に、オレの顔をナイフの先がかすめたのだ。
そうか、何も言わずにいたのだが、明日香は自分が付けた傷であることを、知っていたのか・・・。