Da.sh Ⅱ
JR新宿駅東口に近い、ビルの3階にある出会い喫茶。
源さんに付いて、中を見渡しながら入る。
いろいろと趣向を凝らしたカフェはあるようだが、そういった類ではネットカフェ以外に入るのは初めてだ。じっくりと、あたりを眺めまわした。
源さんが金を支払うのを、横に立って眺める。
ひとり5千円! ふたりで1万円。
その料金の高さに目を剥いた。源さんの手元を、剥いた目で追いかける、久々に目にするのは、とんと御無沙汰している、なんとも懐かしい
“福沢諭吉”。
レシートをポケットに突っ込みながら歩きだした源さんに遅れまいと、くっついて個室の方へ向かった。
源さんに促されながら、マジックミラーになっているという小さな窓から、ひと部屋ずつ中を覗いていった。
狭い部屋の中で大学生かと思える女の子が、ジュースを脇テーブルに置いて、コミック本に夢中になっている姿を見るにつけ、オレには合わないところだと思ったが、源さんの好意を無にするわけにいかない。
オレは、順繰りに小さな窓の中を覗いているうちに、ひとつの部屋の前で釘づけとなり、中を凝視した。
「おっ、気に入った子がいたかい」
それには答えず、ドアから離れたオレの体が震え出した。
「どうしたんだ」
源さんはオレを押し退けて窓に顔を近づけてから、再びオレを見た。
オレは、顔を背けた。