Da.sh Ⅱ
だが、残飯、と分かった後も、一度そういったものを腹に収めてしまうと度胸が付いた。というか、もうどうでもいいや、という気がして動くのも面倒だし、さらに飲み食いしていると、喋ることの少ない光圀さんの重い口が開いた。
光圀さんは、先ほどからずっとオレを見つめていたのだ。
「その鉄腕アトムを見ていると、博士を思い出すよ、なぁ」
お茶の水博士のことかと思ったが、違った。
光圀さんは、オレの毛布を指差している。オレは毛布を目の前に持ってくると、その図柄を見た。
鉄腕アトムが前にかがんで、尻から噴射している。
「その毛布はさ、博士のお気に入りで、大切に使ってたんだわ。ちょうど1か月前になるかなぁ、1月に、死んじまってさ。いい奴だったよ」
「いい奴だったよな」と、皆がうなずいて言った。
「いやさ、風邪で寝込んじまったんだナ、みなで交替して介抱したんだがぁ、肺炎になったらしい。ワシらは、病院には行けんだろぅ。健康保険な〜んてものはぁ、ない。金もぉ、ない。薬局で買った薬を与えていたんだが、夕方戻ってくるとさぁ、息がなかったぁ、という訳さ。その毛布にくるまってぇ」
淡々と話す源さんだが、死人をくるんでいた毛布だと聞いて、そっと丸めて横に置き、そこから立ち去ろうとした。
「5人で団結すりゃぁ、怖いものなし。よろしくたのむわ」
と、ズボンの裾を握られた。