Da.sh Ⅱ
「美味(うま)いだろ」
「源さんが高級料亭から、運んで来たんやで」
関西弁に興味がわき、その男の顔を見た。小太りで、オレと同年代と思われる。オレと違って、黒い髪が十分に残っているが。
「一文字隼人、いいます。リサイクル資源(粗大ゴミ)置き場から、お宝集めてますんや」
「私は、悪代官を懲らしめるために、今はこのような姿にやつしておりますが、水戸光圀、と申します。お見知りおきを。空き缶などを集めながら、あそこにいる役人どもを、見張っております」
都庁の建物を指して言う男は、50代といったところか。やはり小太りの、目尻がやや下がりぎみの、目ン玉が外寄りの、少し変わった雰囲気を漂わせている。
「ふたりはテレビの影響が大きいてな、時のヒーローですわ。ワテは太郎です。ほれ、食い倒れ太郎、知ってはりまっか。大阪道頓堀の、あの有名な、アレです」
「はあ」、と言ったもののよく分からない。年齢も推定できない、ギョロ目で少し痩せぎすの男。
「太郎には、自転車で駅を回って、雑誌を集めてもらってる。こういう仕事にもぅ、縄張りがあってな。そのルールさえ守ってたらぁ、十分な収入になる。健には電車に乗って、各ぅ、駅構内に捨てられた、雑誌を集めて欲しい」
「よく分かりませんが」
「追い追い教えたるがな。それよりおやっさん、飲みまひょ」
太郎さんは、源さんの前にある瓶に手を伸ばした。