After Tragedy5~キュオネの祈り(前編)~
門番がそう聞くとデメテルは手元にある書類を門番に見せ、そこを通ろうとした。門番のうち1人がデメテルの前に立ちはだかり、道を塞ぐ。
「貴方様でも、人間2人を通すことは出来ません。ここは人間1人に付き、神界の者を2人用意しないと通行を認めないように申し付けられております。」
「男性の方はそうかもしれませんが、こちらの子は神界の者です。書類にもキュオネ・フェアリースの無期限通行許可を認める内容が書かれていたはずです。汝らはそれでも門番ですか?」
「しかし…。」
「では、魔力に反応する岩に彼女の手をかざして証明しましょう。」
今まで僕等に見せたことも無い頑固とした顔でデメテルはそう言うと、キュオネの手を強く引き、門の傍にあった岩に触らせた。キュオネの腕が岩に触れると、色が赤紫に光った。それが光った瞬間、キュオネが動揺したように見えた。
「申し訳ございません。」
そういうと門番は深々と頭を下げ、僕等を通した。デメテルはキュオネの手を握ったまま、前をどんどん歩いていく。僕は後を追った。
門番が見えなくなったのを確認すると、デメテルは強く握っていたキュオネの手を離し、キュオネに謝った。その姿は、いつもの謙虚で控えめな彼女だ。キュオネは、そんなデメテルに首を振る。僕は、キュオネが無理をしているのでは無いかと心配をして表情を見ようとしたが、前を歩いているキュオネの表情は確認できない。
「無事に通れて良かったね!」
キュオネは振り返って、僕の方を向く、その顔は笑顔だ。僕は少し安心をした。
「デメテルさんでも、強く出る時があるんですね。」
さっきの様子を僕は思い出しながら聞くと、デメテルは後ろにいる僕にも分かる様な決まりが悪い雰囲気の声を出しながら言った。
「あんまり好きじゃないけど、建前仕方がないからね。」
「僕には、こんな感じでいいんですか?」
ふと疑問に感じたので聞くと、デメテルはこちらに振り向いて微笑んだ。
作品名:After Tragedy5~キュオネの祈り(前編)~ 作家名:未花月はるかぜ