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未花月はるかぜ
未花月はるかぜ
novelistID. 43462
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After Tragedy5~キュオネの祈り(前編)~

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 僕は、それを聞くと俯きながらも笑った。整備する必要の無くなった道に、草が伸び伸びと生えている。その道に、かつての小さい僕とレーニスは、確かに歩いていた。僕は、実の母親がいないことをたまにレーニスに寂しいと言った。レーニスは、それを聞くと優しく抱き上げてくれた。か弱いレーニスがどれくらい無理をして、僕を抱き上げてくれていたのか、あの頃の僕は知らない。今となっては、どんな気持ちで彼女が僕と接していたのか聞くことも出来ない。ただ、そういった日の帰り道の夕日が綺麗だったことと、僕が甘えん坊で泣き虫だった事だけは確かだった。レーニスが優しく僕に気遣ってくれていた分、僕は大して辛い思いをせずにいられたのだと思う。レーニスが居なくなって、僕はそのことに気が付いた。もっとレーニスが誇れるような僕になりたかった。

 感慨に耽っていた僕の手を、その時、キュオネが激しく引っ張った。僕は若干バランスを崩し、現実に引き戻された。
「ねえ、ねえ!これは何て言うの?」
 どこにでも咲いている身近な雑草を指差してキュオネは聞いてきた。レーニスに似ている彼女は、彼女の母親と違い世間知らずだった。
「ハルジオンだよ。」
 僕は、何とも言えない気持ちになりながら、キュオネに花の名前を教えた。彼女は、物珍しいとも思えないその花を嬉しそうに摘んで眺めた。その様子は幼く、子供みたいで、僕は笑ってしまった。
「それ、私にも聞いていなかったっけ?」
 先頭を歩いていたデメテルが振り向くと、キュオネはいたずらっぽく笑って、『そうだったっけ?』なんて答えた。その笑顔が青い空によく映えた。今は夕暮れではなく、昼時。温かい日差しがキラキラしている。キュオネの黄色の服が日の光を反射して更に明るく見える。摘むほどで無い花をキュオネは摘んで、抱きかかえた。とても大切なものを抱くように。そのキュオネの表情がとても柔らかくて、僕はそれを見ていると安心していくのを感じた。

 大理石で出来た神界の入り口には2人の門番がいた。
「デメテル様、そちらの2人は明らかに神でも精霊でも無いように見えるのですが…。」