After Tragedy5~キュオネの祈り(前編)~
「遅いから、来てしまったのだけれど…。」
デメテルの少し控えめな声がした。
デメテルは、いつまで経っても僕等が戻らなかったので、様子を見に来たようだった。
「おお!ラッキー!!!これ、家まで持って行ってくれ!!!頼んだ!!!」
キロは、持ってきていたらしい瓶に水を汲むとデメテルに押し付けた。
「…。」
さすがに、それは無礼すぎるのではないだろうか…。デメテルは、少し黙っていたが、溜息を尽き、キロにそれを押し返した。
「時間がないから、キロ、それは自分で持ち帰ってくれませんか?」
キロは物珍しそうな顔をしてから、『連れないなー』と言ったことを言いながら、瓶を受け取った。
「キロさんは、行かないんですか?」
「行かない!行かない!あんな所、一生行かないね!」
僕はキュオネにキロが付いて行かないことが意外だったので聞くと、キロはそんな風に答えた。キュオネはそれを聞くと苦笑いをしている。
「じゃあ、向かってもいいかしら?」
デメテルは、僕等に許可を取ると神界の門に続く道に向かって、歩き始めた。
シー兄ちゃんの石の牢屋の脇を通り、行きなれた道を外れると神殿へ続く道に出る。
「…。」
僕は、何とも言えない気持ちになった。神殿までの1本道は14年前と違い、狭くなっていた。雑草などが生い茂り、道と草木を隔てる境目が見えない。
「ユクス、どうかした?」
デメテルが僕を眺めて聞いてきた。
「道が細くなりましたね…。」
「通る人がいなくなったからね…。よく、レーニスがユクスを連れて歩いていたよね。」
作品名:After Tragedy5~キュオネの祈り(前編)~ 作家名:未花月はるかぜ